尾張員職

尾張員職の生涯とその影響

尾張員職（おわり の かずもと）は、平安時代後期における著名な神官であり、尾張氏の一員として熱田神宮の大宮司を長年務めました。彼は、尾張氏が代々熱田神宮を祭祀してきた伝統を持つ家系の一員であり、古代尾張国造の末裔でもあります。この家族は長い間、大宮司職を世襲してきたことから、尾張氏は名門としての風格を誇っていました。

経歴

尾張員職は約40年間にわたり熱田神宮の大宮司職を務めたとされますが、その頃の尾張氏の力は次第に衰退していました。それにもかかわらず、員職はその地位において優れた影響力を保持していました。特に11世紀後半には、彼は娘である尾張職子を尾張国目代の藤原季兼と政略結婚させ、この結婚契約により尾張氏と国衙の間にあった緊張関係を解消しました。

また、員職は晩年において霊夢の託宣を受けたことから、永久2年（1114年）頃に孫の藤原季範に大宮司職を譲ることを決定します。この決断により、熱田大宮司職は尾張氏から藤原氏、後の千秋家へと引き継がれることとなりました。これ以降、藤原氏はこの職を世襲し、神宮との朝廷や武力集団（源氏や足利氏）との結びつきが強化されていったのです。

一方、尾張氏はその後も権宮司として存在を続けましたが、政治的な影響力は次第に薄れていく運命にありました。大宮司を譲ったことで、員職は尾張氏の伝統を守りつつも、新しい時代に対応した新たな関係の構築に貢献したと言えるでしょう。

家族・系譜

尾張員職の家族もまた、歴史的な重要性をなす人物たちが多くいます。彼の娘、尾張職子（松御前）は藤原季兼の妻となり、孫の藤原季範を産みます。藤原季範は後に熱田大宮司となり、員職の下でしっかりと育てられました。さらに、曾孫の由良御前は源義朝の正室となり、源頼朝の母であるなど、一族は後の日本史にも重要な影響を与える存在となりました。

このように、尾張員職はただの神官としての活動に留まらず、その家族とともに日本の歴史に深い足跡を残した人物と言えます。熱田神宮の神官としての役割を果たすだけでなく、彼が築いた関係性は長きにわたり日本の神道や朝廷に関わる重要なファクターとなりました。

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