由良御前

由良御前：源頼朝の母、波乱の生涯

由良御前は、平安時代末期に活躍した女性です。正確な生年は不明ですが、保元4年（1159年）3月1日に亡くなりました。熱田神宮の伝承では由良姫と呼ばれ、系図には大進局と記されています。尾張国出身で、熱田大宮司・藤原季範の娘でした。

由良御前の出自は、当時大きな影響力を持っていた熱田大宮司家の出身であったことが、彼女の人生に大きな影を落としました。熱田大宮司家は、男子は後白河院の北面武士になる者が多く、女子は宮中で重要な地位に就く者もいました。由良御前自身も、後白河院の母である待賢門院や、姉である統子内親王（上西門院）と繋がりの深い環境で育ったと考えられます。上西門院の女房であった可能性も示唆されています。

久安年間（1145～1151年）、由良御前は源義朝と結婚。頼朝、希義、坊門姫の三子をもうけました。義門も彼女の子供であるという説もあります。保元の乱（1156年）では、実家である熱田大宮司家は義朝を支援しました。この乱の後、頼朝は保元3年（1158年）、統子内親王の立后に伴い皇后宮少進に任命され、翌年には女院号宣下された統子内親王の蔵人に任命されています。これは、由良御前の出自と、彼女を取り巻く環境が、頼朝のキャリア形成に影響を与えたことを示唆しています。

しかし、保元4年（1159年）2月、由良御前は急逝しました。この死は、平治の乱（1160年）のわずか9ヶ月前でした。この出来事が、後の平治の乱や、頼朝の運命にどのような影響を与えたのかは想像するしかありません。

由良御前没後、平治の乱においては、彼女の兄弟である藤原範忠は義朝の敗死後、甥の希義を朝廷に差し出しました。一方、弟の祐範は頼朝の伊豆国への流罪後も、彼を支援し続けました。これらの行動は、由良御前の家族が、義朝、そして頼朝に対して複雑な思いを抱いていたことを物語っています。

頼朝は、文治4年（1188年）に奥州藤原氏征伐を控えた際、「亡母のため五重塔を建立する」「重厄のため殺生を禁じる」ことを理由に、軍事行動を延期しています。翌文治5年（1189年）6月9日には、鎌倉の鶴岡八幡宮に亡母の追善供養のための塔を建立し、都から導師を招いて盛大な供養を行いました。後白河院からは馬や錦が贈られました。この事実は、頼朝が母である由良御前を深く敬愛し、その死を深く悼んでいたことを示しています。

由良御前は、歴史の表舞台には立たなかったかもしれませんが、その生涯は、平安時代末期の激動の時代を生き抜き、源氏という名門に嫁ぎ、後に鎌倉幕府を開く源頼朝を生んだ女性として、日本の歴史に重要な足跡を残しました。彼女の死は、息子頼朝の人生、そして日本の歴史に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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