尾竹国観

尾竹国観：夭折の才能と多様な表現世界

尾竹国観（おたけこっかん、1880年4月21日 - 1945年5月20日）は、明治から昭和期にかけて活躍した日本画家、浮世絵師です。新潟市に生まれ、尾竹越堂、尾竹竹坡を兄にもつ、いわゆる尾竹三兄弟の末弟として知られています。幼少期から絵画の才能を発揮し、8歳頃から絵を描いて家計を助けていたという逸話も残っています。

東京学齢館の児童画コンクールで一等を受賞したことをきっかけに上京し、小堀鞆音に師事。その後、富山に移り住み、兄たちと共に新聞挿絵や売薬版画などを制作しながら研鑽を積みました。10代半ばにはすでに富山博覧会で受賞するなど、その才能は早くから開花していました。

その後、再び上京し、小堀鞆音のもとで学びを深めた国観は、20歳前後から日本絵画協会や日本美術院連合絵画共進会などで活躍。数々の受賞を重ね、名声を高めていきます。しかし、明治41年の「国画玉成会事件」では兄の竹坡と共に岡倉天心らと袂を分かち、その後も、審査における不遇など幾多の困難に見舞われました。

国観は、文展（文部省美術展覧会）にも積極的に出品し、第3回文展で『油断』が二等賞、第5回文展で『人真似』が三等賞を受賞するなど、高い評価を得ました。一方、大正2年の文展では、横山大観らを審査員とする「学校派」によって不可解な落選（文展事件）を経験するなど、複雑な時代状況の中で創作活動を続けました。

国観の画風は、人物画にその真価を発揮したと評されています。天性のデッサン力と即興性で、しばしば衆人環視の中で作品を完成させたというエピソードは、彼の並外れた才能を物語っています。緻密に描き込まれた作品も素晴らしかったでしょうが、彼の即興性と大胆さから生み出される作品には、独特の力強さと魅力が感じられます。また、一風変わった画風と、特徴的な落款も彼の作品を識別する重要な要素となっています。

晩年は、帝展の無鑑査作家に選ばれ出品するものの、新たな境地を開拓するには至りませんでした。しかし近年では、教科書や雑誌の挿絵、ポンチ絵、絵本など、メディアを通じた彼の多様な仕事が再評価されつつあり、その才能の多様性が改めて注目されています。1945年、疎開先の福島県で65歳で亡くなりました。

国観の作品には、木版画の「出世鏡太閤記　橋之場」、「敵陣漸く乱る」、日露戦争を題材としたポンチ絵など、数多くの代表作があります。また、博文館の雑誌『文芸倶楽部』の口絵なども手がけており、その活動は多岐にわたっています。

2007年、美術誌『Bien（美庵）』の特集「きみは、尾竹三兄弟を知っているか？」をきっかけに、尾竹三兄弟、そして尾竹国観への関心が再燃しました。この特集は、国際浮世絵学会の機関誌や地元紙でも高く評価され、全国的な尾竹ブームの火付け役となりました。

現在、尾竹国観の作品は、富山市売薬資料館、国立国会図書館、大阪府立国際児童文学館、三康図書館などの機関に所蔵されています。彼の作品は、近代日本における絵画表現の多様性を示す貴重な資料として、後世に語り継がれていくことでしょう。

尾竹国観は、数々の困難や不遇にも関わらず、独自の画風と旺盛な創作意欲で、絵画の道を歩み続けました。彼の生涯と作品は、現代においても多くの人の心を捉え、新たな解釈と評価を生み出し続けています。

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