尾竹竹坡

尾竹竹坡：夭折の天才、その生涯と画業

尾竹竹坡（おたけ ちくは、1878年～1936年）は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本画家、浮世絵師です。新潟県に生まれ、幼い頃から絵画の才能を示し、神童と呼ばれました。尾竹三兄弟の次男として知られ、兄の越堂、弟の国観と共に、日本近代絵画史に名を刻みました。

幼少期から富山時代

4歳の頃から南宗派の絵師に師事し、幼少期より類まれな才能を発揮しました。襖絵や花鳥画を手掛け、10歳代には絵を描いて家計を助けるなど、早くから画業に携わりました。その後、兄と共に富山に移り住み、売薬版画の下絵や新聞の挿絵などを描くなど、生計を立てるために絵を描きました。役者絵や福絵なども手がけました。弟の国観が児童画コンテストで受賞したことをきっかけに、雑誌への挿絵制作も開始しました。

上京と成功、そして挫折

明治29年（1896年）、兄と共に上京し、川端玉章に師事。日本絵画協会や日本美術院連合絵画共進会などで受賞を重ね、人気画家となりました。当時の東京美術学校出身作家たちの作品価格をはるかに上回る高値で作品が売れるほどでした。若手作家集団「大同画会」を結成し、国画玉成会にも参加、文展に出品するなど活躍しました。しかし、国画玉成会を巡る岡倉天心との対立をきっかけに、退会。その後も文展で入賞を重ねましたが、学校派との対立や、兄弟自身の性格的な問題も重なり、文展落選を経験するなど、苦境に立たされます。

借金と再起への挑戦

文展落選後、多額の借金を負った竹坡は、借金返済のため、大量生産的な作品制作を余儀なくされます。しかし、この経験を通して、自身の画業を見つめ直し、実験的な作品制作にも挑戦します。未来派に接近し、前衛グループ「八火会」を結成するなど、再起を目指しました。晩年は、目黒雅叙園の装飾などを手掛けました。

作品と評価

尾竹竹坡の作品は、木版画と日本画（肉筆画）の両方を残しています。代表作には歌舞伎絵、七福神図、そして雑誌の口絵などがあります。近年、美術誌での特集や個展開催を通して、改めてその画業の多様性と高い画技が再評価されています。その作品価格は、描き込みの程度によって大きく変動します。

弟子と子孫

竹坡には、蕗谷虹児など多くの弟子がいました。孫である尾竹永子はダンスアーティストとして世界的に活躍し、尾竹由己は美術予備校の学院長として活躍しています。

まとめ

尾竹竹坡は、才能に恵まれながらも、時代の流れや自身の性格、そして周囲との関係性の中で苦悩しながらも、常に創作を続けました。その生涯は、成功と挫折を繰り返しながらも、自身の芸術を追求し続けた、稀有な画家の物語です。彼の作品は、現在も多くの人々に感動を与え続け、日本近代絵画史における重要な足跡として残されています。 彼の画業は、私たちに、芸術家の生き様と、時代の変化の中で揺れ動く創作活動の複雑さを伝えています。そして、再評価の高まりは、彼の作品が持つ普遍的な魅力と、芸術家としての揺るぎない情熱の証と言えるでしょう。

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