居酒屋タクシー

居酒屋タクシーとは

居酒屋タクシーとは、乗客に対して酒や肴を提供するタクシーサービス、またはそのサービスを行うタクシーを指します。このサービスは、主にタクシー事業者が上得意客を獲得するための利益供与として行われていました。

公務員の利用と倫理問題

2008年、このサービスを日本の中央省庁に勤務する国家公務員が利用していたことが発覚し、大きな社会問題となりました。報道や野党からの批判を受け、公務員の倫理に照らして不適切であると指摘されました。

国家公務員は、予算編成や国会答弁の準備などで深夜まで残業することが多く、終電後の時間帯にタクシーを利用する際、公費で購入されたタクシーチケットが使われていました。かつては、そのタクシー車内で運転手が缶ビールや肴などを無料で提供するサービスが広く行われていました。

この行為は、リベート（収賄や贈賄）に該当する可能性や、国家公務員倫理規定に違反するとして問題視されました。調査の結果、多くの職員がタクシー運転手からビールや金品などの提供を受けていたことが判明しました。

さらに、正規の運賃よりも高額な請求をタクシー運転手に教唆し、差額のキックバックを要求する職員もいたことが明らかになりました。職員とタクシー運転手は懇意になり、特定のタクシーを呼び出して利用することで、贈与・接待を行うタクシー事業者と結びついていました。利用者側にとっても、馴染みの運転手であれば、自宅住所や道順を伝える手間が省け、利便性が高かったという背景もありました。

東京都、京都市、大阪市などの地方公務員も居酒屋タクシーを利用していたことが明らかになっています。

関係者の処分

この問題を受け、各任命権者は国家公務員倫理法等に違反したとして、職員33人を国家公務員法に基づき懲戒処分としました。また、623人に対しては、各府省の内規に基づいた訓告や厳重注意などの措置が取られました。

国家公務員倫理規定では、利害関係者以外からの供応接待であっても、社会通念上相当と認められる程度を超えて供応接待や財産上の利益の供与を受けてはならないと定められています。この規定に違反したと判断された職員が処分対象となりました。

人事院の国家公務員倫理審査会は、この問題で多数の処分者が出たことを受け、各府省の倫理監督官に対し、倫理研修の実施や倫理事務担当者への相談を周知徹底するよう要請しました。また、2008年度の公務員白書では、このタクシー内接待事案を例に挙げ、倫理規定が「未だ一人ひとりの公務員の中に、行動規範として十分に浸透・定着したとは言い難い状況にある」と分析しました。

タクシー事業者の処分

国土交通省関東運輸局は、職員に現金や金券を渡していた東京都の個人タクシー運転手11人に対し、道路運送法が定める運賃または料金の割引禁止に違反したとして、車両使用停止処分を行いました。

また、自動車交通局長は、タクシー業界団体に対し、現金や金券類の提供禁止を徹底するよう要請しました。さらに、ビール等の飲食物の提供についても、過剰なサービス競争は利用者に不公平感を与え、公共交通機関として好ましくない行為であるとの見解を示し、節度あるサービスの提供を求めました。

この事件は、公務員の倫理観やタクシー業界のサービス提供のあり方について、改めて問い直すきっかけとなりました。

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