展望 (雑誌)

筑摩書房の伝説的雑誌「展望」

「展望」は、筑摩書房が発行していた総合雑誌であり、その歴史は二つの時期に分かれています。第一次は1946年1月から1951年9月にかけて、全69冊が刊行されました。その後、一時休刊を挟み、第二次として1964年10月から1978年8月まで、全167冊が刊行されました。編集長は時期によって異なり、その中には、著名な編集者である臼井吉見が編集長を務めた時期もありました。

「展望」が映し出した時代

大澤聡によれば、「展望」は筑摩書房において伝説的な雑誌として位置づけられています。特に第一次刊行期には、戦前の教養や思想を振り返り、戦後日本の進むべき道を模索するような記事が多く見られました。敗戦直後の混乱期にあって、知識人たちが自らの内面と向き合い、新しい時代を切り開こうとする熱意が感じられます。

掲載された著名な作品

「展望」には、数多くの著名な作家たちの作品が掲載されました。以下にその一部を紹介します。

三木清「親鸞」: 哲学者の三木清の遺稿であり、雑誌の創刊号に掲載されました。
太宰治: 『冬の花火』(1946年6月号)、『ヴィヨンの妻』(1947年3月号)、そして代表作の一つである『人間失格』(1948年6月号から8月号)が掲載されました。
大岡昇平: 戦争文学の金字塔『野火』(1951年1月号から8月号)が掲載されました。
中野重治: 『五勺の酒』(1947年1月号)が掲載されました。
平林たい子: 『かういふ女』が掲載されました。
宮本百合子: 『道標』が掲載されました。
田原総一朗: 『原子力戦争』が掲載されました。
椎名麟三: 『深夜の酒宴』(1947年2月号)と『重き流れの中に』(1947年6月号)が掲載されました。

これらの作品からもわかるように、「展望」は単なる文芸雑誌にとどまらず、思想、社会、文化など多岐にわたる分野を網羅し、当時の日本の知識人層に大きな影響を与えました。特に、戦後社会の混乱と再建の過程を記録した重要なメディアとしての役割を果たしました。また、多くの作家にとって「展望」への掲載は、その後の活動を大きく左右する重要な出来事でもありました。

「展望」は、その創刊から現代に至るまで、日本の思想と文学史において重要な位置を占めています。単に過去の雑誌としてではなく、現代においてもその影響力を感じることができるでしょう。

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