平林たい子

平林たい子の生涯と業績

平林たい子（ひらばやし たいこ、1905年10月3日 - 1972年2月17日）は、日本の小説家で、多様な経験を生かして独自の文学世界を築き上げました。彼女の本名はタイで、長野県諏訪市に生まれました。貧しい農家で育った彼女は、12歳の時にロシア文学に出会い、作家としての道を志す決心をしました。その後、上諏訪高等女学校に進学し、首席で卒業後は東京へと移り住みました。

大学卒業後、彼女はアナーキストの山本虎三との関係を経て、さまざまな職業を経験しました。平林は、非常に波乱万丈の人生を送り、同棲や離別、放浪生活などを経て、多くの人生経験を作品に取り入れています。満州での生活や、不幸な運命を辿った女児の死、そして不敬罪で投獄された山本を残して帰国したことは、彼女の小説『投げすてよ！』や『施療室にて』に色濃く反映されています。

1927年に小堀甚二と見合い結婚したものの、1955年に離婚。その後、1947年には『かういふ女』で第1回女流文学者賞を受賞しました。彼女の作品は、戦後の転向文学の中でも特に際立っており、反共姿勢が強化されていく中で、民社党を支持し、日本文化フォーラムや言論人懇話会にも参加しました。

また、平林は文学家としての立場を超え、当時の政治的状況にも強い影響を及ぼしました。特にボリス・パステルナークのノーベル文学賞に関するソ連政府の動きに対する批判では、日本ペンクラブ代表と共に異議を唱えるなど、公に自己の意見を表明しました。

平林はその表現力から、社会時評や随筆、小説においても多様なテーマを探求しました。特に戦時中に博徒に助けられた経験から、ヤクザ文化に興味を持ち、任侠小説にも挑戦したことが特徴的です。1967年には『秘密』で第7回女流文学賞を受賞しました。

1972年には急性肺炎により亡くなりましたが、彼女の死後、日本芸術院賞や恩賜賞が授与され、遺族によって平林たい子文学賞が設立されました。平林たい子記念館は、彼女の自筆原稿など貴重な資料を収集し、長野県諏訪市に設置されています。

平林との交流があった宇野千代への思いも深く、宇野の事業への支援の一環として20万円を提供したエピソードが知られています。ただし、宇野が事業に興味を持ちすぎたことには不満を抱いていたとされています。

平林の作品は、彼女自身の人生経験を元にしたフィクション、社会的な評論、随筆など、多岐にわたります。独自の視点から描かれたその作品は、戦後の日本文学における重要な位置を占めており、今日でも多くの読者に読まれ続けています。

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