臼井吉見

臼井 吉見（うすい よしみ）

臼井吉見（1905年6月17日 - 1987年7月12日）は、日本の著名な編集者、評論家、小説家であり、日本藝術院の会員でもあります。彼は長野県南安曇郡三田村に生まれ、文学を追求し続けた生涯を送りました。彼の息子は映像作家の臼井高瀬です。

来歴・人物

臼井は、旧制松本中学（現在の長野県松本深志高等学校）や旧制松本高校文科甲類を卒業後、1929年に東京帝国大学文学部を卒業しました。学生時代には、筑摩書房の創業者となる古田晁や、俳優・演劇評論家の松本克平が同級生でした。彼はその後、旧制伊那中学や松本女子師範学校で教員として教鞭を執り、上京して東京女子大学でも教職に就きました。

1946年には、筑摩書房から創刊された文芸総合雑誌『展望』の編集長に就任し、以降は文芸評論家としても多くの著作を残しました。編集者としての業績としては、筑摩書房初の大型総合全集『現代日本文学全集』全97巻を手掛け、このシリーズは会社の倒産危機を乗り越える一助ともなりました。また、1965年から25年にわたる編集作業を通じて『明治文学全集』全99巻を完成させたことでも知られています。

彼の代表的な著作である大河小説「安曇野」は、1964年から執筆が始まり、1974年に完結し、その作品に対して谷崎潤一郎賞を受賞しました。1956年には『近代文学論争』により芸術選奨文部大臣賞を手にしています。

事件と評価

1977年に『展望』に掲載した記事『事故のてんまつ』が引き金となり、川端康成の家族から抗議を受け、訴訟が提起される事態になりました。この作品では川端の生い立ちと孤独を描き、最終的には臼井が謝罪し和解が成立しました。この出来事は、彼の文筆活動に影を落としたものですが、それでも臼井は多くの読者に支持され続けました。

1987年、急性心不全により東京都杉並区で亡くなるまで、彼は日本文学とその編集活動に多大な影響を与えました。晩年には、NHKのクイズ番組『それは私です』に解答者として出演するなど、広く知られた存在でした。彼の業績を知る上で、安曇野市役所堀金支所に隣接する堀金中央公園に併設された「臼井吉見文学館」も訪れる価値があります。

主な著書・作品

彼の著作は多岐にわたります。1956年の『近代文学論争』をはじめ、随想集や小説、評論などがあり、彼の幅広い視点が伺えます。代表作「安曇野」は全5巻から成る一大作品で、多くの読者に愛されています。また、彼は数多くの編著作を手掛けており、その研究の深さと広範さは特筆に値します。

まとめ

臼井吉見の生涯は、編集者、評論家、小説家として日本文学に貢献したひとりの知識人の物語です。彼の著作は今日でも多くの人々に読まれ、語り継がれています。彼の言葉や作品は、これからも文学界に大きな影響を与え続けることでしょう。

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