山の上ホテル

山の上ホテル：歴史と文化が息づく千代田区のクラシックホテル

東京都千代田区神田[[駿河台]]の高台に位置する山の上ホテルは、1954年開業のクラシックホテルです。本館は、著名な建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計を手掛けた、歴史的建造物として知られています。その風格ある佇まいは、千代田区景観まちづくり重要物件にも指定されており、多くの文化人にも愛されてきました。

ヴォーリズ建築と激動の時代

本館の建物は、1937年に明治大学の隣接地に「佐藤新興生活館」として建設されました。これは、明治大学OBの佐藤慶太郎氏の寄付を基に建てられたもので、欧米の生活様式を啓蒙する目的がありました。戦時中は旧海軍、戦後はGHQに接収され、米軍の婦人陸軍部隊（WAC）の宿舎として「Hilltop」と呼ばれていました。

ホテルとしての開業と発展

GHQの接収解除後、実業家・吉田俊男氏によって1954年1月20日、ホテルとして開業しました。「Hilltop」を「山の上」と意訳したホテル名は、その立地と歴史を象徴しています。創業当初は客室47室、従業員7名という小さなホテルでしたが、1970年には別館が建設され、規模を拡大しました。しかし、2014年6月に別館は閉鎖され、その後は本館のみでの営業が続けられていました。別館は2014年9月に明治大学に売却され、アスベスト除去のために解体されました。

文化人の隠れ家

山の上ホテルは、神田神保町に近い立地から、多くの作家や文化人が滞在する場所として知られていました。ホテルに籠もって執筆活動に集中する「カンヅメ」も多く行われ、「文化人のホテル」として親しまれてきました。川端康成、三島由紀夫、池波正太郎といった著名な作家たちが、このホテルを定宿として利用していました。三島由紀夫は、ホテルの静寂とサービスを高く評価する言葉を記しています。また、数学者の森毅氏や作家・檀一雄氏なども、山の上ホテルにゆかりのある人物です。檀一雄は、愛人関係にあった女優の入江杏子とこのホテルで同棲し、その生活を描いた『火宅の人』を発表しました。

老朽化と休館、そして未来へ

2019年にはリニューアル工事が行われましたが、老朽化は深刻化していました。2023年10月、2024年2月13日をもって休館することが発表され、予定通り休館となりました。休館後、明治大学が土地と建物を取得することが発表されました。明治大学は、創立150周年記念事業の一環として、外観を維持しつつ改修工事を施し、ホテル機能を継続させることを検討しています。学生支援や地域連携のための利活用も視野に入れ、新たな「山の上ホテル」の誕生が期待されています。

その他の出来事

山の上ホテルの歴史には、いくつかの出来事も記録されています。2012年には、下水道料金の不正使用が発覚し、行政処分を受けました。また、2013年には別館で火災が発生しましたが、人的被害はありませんでした。

今後の展望

長い歴史と多くの文化人に愛された山の上ホテルは、休館後もその存在感を示し続けています。明治大学による再整備によって、歴史的建造物としての価値を守りながら、新たな役割を担うことが期待されています。再開時期は未定ですが、今後の動向に注目が集まります。

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