山の手

山の手の概要

「山の手」とは、一般に低地にある下町に対して高台に位置する地域を指す言葉です。山手（やまて）とも呼ばれ、その語源は方向を示すものであり、山の方向にあたる台地を指しています。地形的には、数多くの谷に浸食された台地が形成されている地域に該当します。

東京における山の手の歴史

東京において、特に江戸時代前期には、江戸城の周辺やその西側の高台に位置する武蔵野台地が幕臣の居住地域として開発されました。これが、山の手エリアの始まりとされています。江戸時代中期以降、人口増加に伴い、土地不足から下町の本所や深川といった地域にも武家屋敷が造られるようになり、町人との境界は次第に曖昧になっていきました。

山の手といえば、麹町、麻布、赤坂などの地域が著名ですが、これらのエリアにも町人町が広がっており、山の手自体も単純なイメージには収まりきれない複雑な形相を示しています。1889年に東京市が発足した際、その旧市域の西半分に相当する麹町区、芝区、西部の麻布区、赤坂区などが山の手の代表的な地域として認識されています。これら地域は武蔵野台地の東側に位置しています。

近代化に伴い、山の手の範囲は西へと拡大し、「第二山の手」と呼ばれるエリアも形成されました。時代ごとの山の手の定義は異なり、明治時代中頃までは本郷周辺が山の手、その西側は郊外として見なされていました。その後、山手線の内側が山の手、西側の私鉄沿線が郊外、さらに60年代半ばまでは私鉄沿線や田園調布、成城、吉祥寺周辺までが山の手に含まれるようになりました。

現在の山の手の定義は幅広く、二子玉川やたまプラーザ、新百合ヶ丘、所沢にまで及んでいます。特に1923年の関東大震災の復興過程では、山の手の拡張が顕著となり、1930年代には東京市域が現在の東京都区部と一致し、地域としての境界も不明瞭になっていきました。

東京以外の山の手

東京以外の地域でも「山の手」と名付けられたエリアが存在します。例えば、横浜市の中区にある「山手」は、元町を挟んで位置した外国人居留地から名づけられたものです。また浜松市中央区にも「山手」という地名が存在します。大阪市では上町台地上に位置する中央区東部、天王寺区、阿倍野区が「山の手」とされ、神戸市では六甲山地の南麓の地域を指します。これらの地名の背景には、それぞれ地域の歴史や文化が息づいています。

山手洪水

高度経済成長期には、農地が宅地に転用されることで山の手地域の土地利用が高度化しました。これにより、降雨が迅速に河川へ流出し、渋[[谷川]]や目黒川、神田川などの氾濫が頻繁に起こるようになります。この現象は「山手洪水」とも呼ばれ、都市の環境変化がもたらした一つの側面となりました。

結語

総じて「山の手」は、東京をはじめとする都市において独特の歴史と文化を形成してきた地域です。その変遷を辿ることで、地域の発展や社会の変化を理解する手がかりとなります。

もう一度検索