山はね

山はね（Rock burst）とは

山はねとは、地中深く、特に強い応力が集中するトンネルや鉱山などで突発的に発生する、激しい岩盤の崩壊現象です。英語ではRock burstと呼ばれます。まるで岩石が爆発するように崩れる様から、「岩はね」とも呼ばれます。

山はねのメカニズム

山はねは、岩石が脆性破壊を起こし、時に100トンを超える巨大な岩塊が瞬時に崩落することで発生します。この崩壊によって、周囲の岩盤に蓄積されていた莫大なエネルギーが解放されます。また、鉱山における応力分布の変化が、地質学的な歪みエネルギーを解放し、地震を誘発するケースもあります。

掘削規模が大きいほど山はねのリスクは高まり、一般的に掘削規模が180mを超えると発生の可能性が高まるとされています。採掘方法の誤りなどが誘発する地震も、山はねの原因となることがあります。その他、断層や岩脈、節理といった地質構造も山はね発生の要因となり得ます。

山はねによる災害事例

山はねは、甚大な災害を引き起こす可能性があります。1989年には、東ドイツ（当時）のテューリンゲン州にあるカリ鉱山で大規模な山はねが発生し、マグニチュード5.6の揺れを観測、周辺の建物が倒壊するなどの被害をもたらしました。また、南アフリカ共和国では、山はねによって毎年多くの鉱山労働者が命を落としています。

山はねへの対策

山はね対策は、危険性が高まった際に局所的かつ短期間で対応する戦術的な対策と、鉱山の設計段階から長期的な計画に組み込む戦略的な対策の2つに大別されます。

戦術的な対策

エネルギー吸収システムの導入: 岩盤が破砕する前にエネルギーを吸収し、変形を促すシステムを導入します。これにより、落盤を抑制し、万が一システムが破損した場合でも、避難経路を確保することができます。
デストレス・ブラストの実施: 応力の高い脆い岩盤に対して、事前に発破を行うことで、山はねのリスクを軽減します。ただし、デストレス・ブラストの過度な使用は、かえって状況を悪化させる可能性もあります。
採取速度の調整: 採取速度を遅くすることで、単位時間あたりの地震活動を抑制し、岩盤の破砕を防ぐ効果が期待できます。

戦略的な対策

適切な採掘順序の計画: 鉱石の採掘順序を綿密に計画し、計画を厳守します。
大掘削の結合回避: 深い位置での大規模な掘削を可能な限り避けます。
柱状岩石の排除: 掘削空間に残る大量の柱状の岩石を排除または最小限に抑えます。
並行鉱脈の片側ずつの掘削: 並行する鉱脈は、片側ずつ掘削し、上盤の掘削を優先します（手掘りの場合は下盤を優先）。
分岐鉱脈の交差部からの掘削: 鉱脈が分岐している場所では、交差部から掘削を開始し、分岐に沿って掘り進めます。
断層・不連続面からの距離: 可能な限り、断層や不連続面から離れた場所を掘削します。
掘削区域の埋め戻し: 掘削した区域は速やかに埋め戻し、地表に近い状態を維持します。

関連項目

落盤
鉱山事故 - フェルケルスハウゼンの山はね災害

外部リンク

* 『山はね』 - コトバンク

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