山下力

山下力：部落解放運動の変遷を体現した人物

山下力（やました つとむ）は、1941年9月3日、奈良県に生まれました。彼は部落解放運動家として、また奈良県議会議員として長年にわたり活動し、その生涯は部落解放運動の変遷と深く関わっています。

生い立ちと原点

大阪市で下駄屋の息子として生まれた山下は、幼少期に奈良県の被差別部落へ疎開し、そこで育ちました。比較的裕福な家庭環境に育ちましたが、自身が被差別部落出身であることを意識し、複雑な感情を抱えて成長しました。高校時代には、皇太子夫妻への投石を考えるなど、社会に対する反発心を抱いていたこともありました。

挫折と彷徨

建築家を志し大学受験に失敗した後、浪人生活を経て東京工業大学に入学。しかし、デモやギャンブルに明け暮れ、荒廃した生活を送ります。ついには窃盗で逮捕され、大学を中退。釜ヶ崎での日雇い労働も経験するなど、苦難の時代を過ごしました。

部落解放運動への参加

26歳で帰郷後、家業を手伝っていた山下は、1968年からの同和教育に関する糾弾会に参加したことをきっかけに、部落解放運動に身を投じることになります。1969年には部落解放同盟奈良県連合会上但馬支部を結成し、書記長に就任。その後は、糾弾闘争に邁進し、「糾弾屋」と呼ばれるようになりました。

糾弾闘争から人権問題へ

部落解放同盟での活動を通じて、暴力糾弾事件や八鹿高校事件など、数々の出来事に関わりました。しかし、2001年には部落解放同盟奈良県連合会を改組し、原則として糾弾闘争を放棄。自著では、糾弾の行き過ぎや利権主義に対する反省の弁を述べています。

新たな組織と活動

2009年には、部落差別が差し迫った課題ではなくなったとして、奈良県部落解放同盟支部連合会を解体し、新たに「人権情報センター絆」を設立。部落問題だけでなく、より広範な人権問題に取り組む姿勢を示しました。

政治家としての顔

1983年から奈良県議会議員を6期務め、部落解放運動だけでなく、地域社会の発展にも貢献しました。国民民主党奈良県総支部連合顧問としても活動し、政治家としての影響力も持ち続けました。

山下力の生涯は、部落解放運動の黎明期から現代に至るまでの変遷を体現しています。糾弾闘争から人権問題への取り組みへと、その活動の軸を変化させながら、部落差別の解消と人権確立のために尽力しました。

参考文献

部落問題研究所編『「解同」は何をしてきたのか』部落問題研究所、1994年 ISBN 4829810394

外部リンク

公式ウェブサイト

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