山下寿郎

山下 寿郎（やました としろう）

山下寿郎（1888年4月2日 - 1983年2月2日）は、20世紀の日本を代表する建築家であり、昭和時代を通じて多くの作品を手掛けました。彼は山形県米沢市に生まれ、厳格な家庭教育を受けて育ちました。父親は教育者であり、総じて士族の出身という背景が彼の人格形成に影響を与えました。叔父には海軍大将の山下源太郎がいて、生涯にわたり尊敬の念を抱いていました。

上京した後、旧制第一高等学校を経て、東京帝国大学の工学部建築学科を卒業。1912年に三菱合資会社に入社し、実務経験を積みました。特に三菱銀行本店や丸ビルの設計に携わるなど、そのキャリアは著名なものでした。さらに、1917年にはアメリカとカナダへの出張を経験し、国際的な視野を広げました。1928年には独立して山下寿郎建築事務所を設立し、昭和の時代における日本建築界の発展に寄与しました。

彼の代表作は多数あり、特に「霞が関ビルディング」は日本初の超高層ビルとして名を馳せています。また、NHK放送センターや米沢市役所庁舎、仙台市役所庁舎など、地域に根ざした公共建築物の設計も数多く手がけました。これらの作品は、近代都市の発展に貢献し、彼の建築理念である「人間生活の進化と向上に役立つもの」という信念が色濃く反映されています。

建築事務所の長として、山下は温厚かつ厳格な指導者として知られ、常に高い職業倫理を持っていました。その人柄は温顔に裏打ちされた正直さと真面目な態度で、多くの後進に愛されました。彼の哲学は公私にわたって貫かれ、特に「Service above Self!」という言葉は、彼の座右の銘であり、社会に奉仕する姿勢を常に持ち続けていました。

学問の面でも山下は多大な貢献をしており、1920年代から1940年代にかけて東京帝国大学工学部や秋田鉱山専門学校で教鞭を執りました。その門下には著名な建築家たちが名を連ね、彼の影響は世代を超えて受け継がれています。また、様々な建築関連の団体や会議でも要職を歴任し、建築士会の発展にも寄与しました。

山下は、建築施工に関する研究を続け、特に「実費報酬加算式施工契約」に関する著書を出すなど、実務経験に基づく理論的な基盤を築きました。彼の成果は、現代の建築界においても重要な指針となっています。

1983年に94歳で没するまで、山下寿郎の存在は日本建築界において多大なる影響を与え続けました。彼の名は、多くの名作と共に、建築史の中で永遠に語り継がれることでしょう。

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