霞が関ビルディング

霞が関ビルディングは、東京都千代田区霞が関に位置する、地上36階、地下3階、高さ147メートルの超高層ビルです。1968年に竣工したこのビルは、日本初の超高層ビルとして、その後の日本の建築に大きな影響を与えました。所有者は三井不動産で、34階には霞会館が入居しており、敷地の一部と10階、11階部分を所有しています。

概要

霞が関ビルは、日本初の超高層ビルであり、1970年に世界貿易センタービルが竣工するまで、約2年間日本で最も高い建築物でした。複合高層ビルの先駆けとして、36階には展望台、下層階には郵便局と診療所、そして地上階周囲には公開緑地を設け、都市における複合的な「街」の機能をビルに取り込みました。また、大型H型鋼を全面的に採用した柔構造による免震構造、スリット入り耐力壁による耐震構造など、当時の最先端技術が導入されました。

建設にあたっては、「セルフクライミング方式」のタワークレーンや「デットプレート捨型枠工法」などの新工法が用いられ、工程管理の改善により建設費を163億6300万円に抑えることに成功しました。1972年には、アポロ計画の有人月面着陸を祝して、日本で初めてビル照明を制御し、外壁にメッセージを描くウィンドアートを披露しました。

その後、1989年、2000年、2009年には、空調、給水、情報通信などのインフラの更新を伴う大規模改修が総額約470億円で実施され、東日本大震災後の2014年には防災対応能力が強化されました。

沿革

1959年秋頃、東京倶楽部の建て替え計画が持ち上がり、三井不動産との共同ビル建設が合意されました。しかし、景気悪化により建設ストップ令が出され、計画は一時中断します。その間に、隣接する霞会館も共同開発への参加を希望し、東京倶楽部と霞会館の敷地統合が進められました。当時の建築基準では、高さ制限がありましたが、日本建築学会が高さ制限撤廃を提言し、容積制限制度の導入を求める答申を提出したことを受け、1963年に建築基準法が改正されました。

三井不動産は、超高層ビル建設に力を注ぎ、1961年末には柔構造の超高層オフィスビル（30階）と周辺開発の青写真が描かれました。1962年には、霞が関ビル企画室と建設委員会が設置され、1963年の建築基準法改正を経て、計画が本格的に進められました。東京倶楽部からは、1964年秋の東京オリンピックまでに新ビルを完成させたいという要望があり、霞が関第一期工事として東京倶楽部ビルが先行して着工しました。

オープン

超高層ビルの建設には特定街区の手法が活用され、会計検査院との間で敷地の使用権交換が行われました。1964年8月には、3箇所を統合した特定街区の第1号となる「東京都市計画霞ヶ関三丁目特定街区」の指定を受けました。

設計は山下寿郎設計事務所に依頼され、三井不動産と鹿島建設（後に三井建設も参加）が緊密に協力する体制が構築されました。また、建築学者も加わり、1965年 3月18日に起工、1967年4月18日に上棟、そして1968年4月12日にオープンしました。

日本初の高層ビル建設には多くの困難が伴いましたが、その様子はNHKのテレビ番組『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』でも取り上げられました。竣工当時、13階は縁起の悪い数字とされ、テナントではなく機械室として利用されました。非常階段は中央共用部に設置され、火災時に煙が溜まらない構造になっています。

建設中から多くの見物人が集まり、完成時には人々に大きな驚きを与えました。最上階36階の展望台「パノラマ36」は連日賑わい、虎ノ門交差点まで長い行列ができるほどでした。しかし、高層ビルが珍しくなくなった1989年に、展望台はオフィスへと改装されました。

ビルの総容積は約50万立方メートル（総重量約10万トン）あり、東京ドームが竣工する前は、その大きさを表現する際に「霞が関ビル何杯分」という表現がよく使われていました。

リニューアル

平成時代に入り、IT化に対応するため、断続的に設備のリニューアルが実施されました。2001年からの霞が関三丁目エリアの再開発に伴い、霞が関ビルでも低層部の増築や改装が行われ、ビルだけでなく地域全体の価値向上が図られました。この再開発計画により、2007年に竣工した霞が関コモンゲート西館と東館は、霞が関ビルの高さを上回っています。

難航した資金調達とテナント探し

建設は昭和40年の不況に直面し、資金調達とテナント探しは困難を極めました。150億円もの巨額資金が必要でしたが、金融難の折から、三井系の大手企業に頼ることはできませんでした。日本開発銀行からの融資も大蔵省の待ったにより頓挫しましたが、第一生命の村上兼次副社長の尽力により、生命保険会社5社による融資団が結成され、75億円の資金が確保されました。さらに、銀行5行の融資団も加わり、合計100億円の融資の目処が立ちました。

テナントは竣工1年前から募集を開始しましたが、オフィス部分はなかなか成約に至りませんでした。江戸英雄社長自らがトップセールスを行い、安全性に関する説明会を開催するなど、熱心な売り込みの結果、竣工年の秋には満室となりました。

受賞

1968年に日本建築学会賞業績部門賞、1969年に第10回BCS賞を受賞、2003年にはDOCOMOMO JAPAN選定日本におけるモダン・ムーブメントの建築に選定。2008年の低層部リニューアルが2009年グッドデザイン賞を受賞。

主な入居企業など

霞会館
東海大学校友会館（2020年8月から休館）
アジア開発銀行駐日代表事務所・アジア開発銀行研究所
伊藤忠エネクス
プルータス・コンサルティング
マツダ東京本社
こども家庭庁

その他、多くの企業が入居しています。

その他

霞が関ビルは、「霞が関」という地名にありますが、最寄り駅は地下鉄の虎ノ門駅です。また、ビル専用の郵便番号「100-60xx」が設定されており、エレベーターロビーのあるフロアは2階です。

同じ霞が関3丁目には、近鉄不動産が手掛けた「近鉄霞が関ビル」も所在します。

脚注

注釈

出典

参考文献

江戸英雄『三井と歩んだ70年』朝日文庫、1994年7月。ISBN 978-4022610270。
日本経営史研究所編『三井不動産七十年史』三井不動産、2012年3月。

関連項目

霞が関地区の超高層ビル
中央合同庁舎第5号館
大同生命霞が関ビル
中央合同庁舎第2号館
霞が関コモンゲート
郭茂林
映画『超高層のあけぼの』 - 霞が関ビル建設を描く。1969年公開。
映画『超高層のあけぼの』 - 霞ヶ関超高層ビル・第1部。1966年公開、制作：日本技術映画社
映画『霞が関147M』 - 霞が関超高層ビル・第2部。1968年公開、制作：日本技術映画社
映画『怪獣総進撃』 - 劇中で破壊される描写がある。

外部リンク

 霞が関ビルディング（公式サイト）

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