山中渓温泉

山中渓温泉：忘れ去られた「大阪の奥座敷」

山中渓温泉は、大阪府阪南市山中渓に位置する温泉（鉱泉）です。かつては「大阪の奥座敷」と謳われ、多くの人々が訪れる賑やかな温泉地でしたが、2024年現在、宿泊施設は全て廃業し、その面影は廃墟としてひっそりと残るのみとなっています。

泉質

泉質は単純硫黄泉-硫化水素型（硫化水素泉・冷泉）です。硫黄の香りが漂う、リラックス効果の高い泉質だったと考えられます。

かつての賑わい

山中渓温泉の歴史は、1930年の阪和電鉄（現：JR西日本阪和線）山中渓駅の開業に始まります。その翌年、1931年7月には温泉旅館「ほととぎす」が開業し、温泉地としての第一歩を踏み出しました。

1950年代から60年代にかけては、「ほととぎす」の他、「阪和館」、「山中荘」、「元禄」、「つるのや」など複数の旅館が軒を連ね、温泉街は最盛期を迎えました。大阪市内からのアクセスも比較的容易であったため、多くの人々が週末や休暇を利用して訪れ、温泉と自然を満喫していました。

衰退の足音

しかし、1970年の大阪万博後、山中渓温泉は衰退の一途を辿ります。その要因の一つが、阪和自動車道建設（1974年開通）に伴う立ち退きによる「山中荘」の廃業でした。さらに、府道拡張工事による用地接収によって「阪和館」も廃業を余儀なくされました。

1970年代以降、第二阪和国道（現・国道26号）や阪和自動車道の開通、国鉄紀勢本線の複線電化など、南紀方面への交通網が整備されたことも大きな痛手となりました。これにより、白浜や勝浦など南紀地域の温泉地へと客足が流れ、山中渓温泉は徐々にその魅力を失っていきました。

正確な時期は不明ですが、遅くとも2005年までに全ての旅館が廃業し、山中渓温泉はその歴史に幕を閉じました。「元禄」の跡地は、2017年3月時点で温泉が湧き出る売地として存在していたようです。

忘れられた温泉地

現在、山中渓温泉は忘れ去られた存在となっていますが、2021年8月にはフジテレビ系の番組「世界の何だコレ!?ミステリー」で、廃墟となった「ほととぎす」が紹介され、再び注目を集めました。しかし、温泉地としての再興は未だ実現していません。

アクセス

鉄道: JR阪和線山中渓駅から徒歩数分
自動車: 和歌山県道・大阪府道64号和歌山貝塚線

かつて「大阪の奥座敷」として栄華を誇った山中渓温泉。その栄枯盛衰は、時代の変化と交通網の発達がもたらした、地方温泉地の厳しい現実を物語っています。

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