山内廣隆

山内廣隆（やまうち ひろたか）氏は、1949年に生まれ、日本の倫理学者として知られ、現在は広島大学名誉教授の任にある。

鹿児島県鹿児島市出身の山内氏は、地元の鹿児島県立鹿児島中央高等学校を卒業後、鹿児島大学法文学部哲学専攻にて哲学を修め、1975年に卒業した。さらに哲学の研究を深めるため、広島大学大学院文学研究科西洋哲学専攻に進学し、1982年に博士課程後期を単位取得の上で退学している。長年の研究成果として、2003年には広島大学より文学博士の学位を授与された。

研究者としてのキャリアは、当初、教育現場からスタートした。比治山女子高等学校での教諭経験を経て、1991年に比治山女子短期大学助教授に着任。その後、1994年には比治山大学助教授に移り、1996年からは広島大学文学部の助教授となった。広島大学では、2001年に同大学院文学研究科助教授、そして2004年には教授へと昇任し、長きにわたり倫理学の研究・教育を牽引した。2014年に広島大学を定年退職し、名誉教授の称号を得た後も、現在に至るまで同大学の特任教授として教育活動を継続している。

山内氏の主な研究分野は多岐にわたるが、その核心にはヘーゲル哲学がある。特に、ヘーゲルの思想がどのように形成され、哲学体系が胎動したのかという過程に焦点を当てた研究は、氏の重要な業績の一つである。また、現代社会が直面する倫理的課題にも深く切り込んでいる。環境問題に関する倫理学的な考察や、生命倫理、情報倫理を含む応用倫理学の理論的探究を行い、これらの分野における議論を主導している。さらに、日本の近現代哲学史にも造詣が深く、特に戦中・戦後の思想家である西晋一郎や田邊元といった哲学者たちの思想を詳細に分析し、その歴史的意義や現代への示唆を考察している。

こうした研究活動を通じて、山内氏は多数の著書、共編著、訳書を世に送り出している。ヘーゲル哲学、環境倫理、日本の思想家に関する研究書は、この分野の研究者にとって重要な文献となっている。また、ドイツの著名な哲学者であるルートヴィヒ・ジープやクラウス・マイヤー＝アービッヒなどの著作の翻訳も手掛け、海外の哲学思想を日本に紹介することにも貢献している。

主要著作:

『環境の倫理学』丸善, 2003年
『ヘーゲル哲学体系への胎動：フィヒテからヘーゲルへ』ナカニシヤ出版, 2003年
『ヘーゲルから考える：私たちの居場所』晃洋書房, 2014年
『昭和天皇をポツダム宣言受諾に導いた哲学者 西晋一郎』ナカニシヤ出版, 2017年
『過剰な理想：国民を戦争に駆り立てるもの』晃洋書房, 2019年
『田邊元の政治哲学：戦中・戦後の思索を辿る』昭和堂, 2021年
『人間論の21世紀的課題：応用倫理学の試練』（石崎嘉彦共著）ナカニシヤ出版, 1997年 (共編著)
『知の21世紀的課題：倫理的な視点からの知の組み換え』（石崎嘉彦, 石田三千雄共編）ナカニシヤ出版, 2001年 (共編著)
『環境倫理の新展開』（手代木陽他共著）ナカニシヤ出版, 2007年 (共著)
ルートヴィヒ・ジープ著『ヘーゲルのフィヒテ批判と一八〇四年の『知識学』』ナカニシヤ出版, 2001年 (訳書)
L・ジープ, K・バイエルツ, M・クヴァンテ共著『ドイツ応用倫理学の現在』（松井富美男共編・監訳）ナカニシヤ出版, 2002年 (共編・監訳)
クラウス・マイヤー＝アービッヒ著『自然との和解への道』みすず書房, 2005-2006年 (訳書)
『ジープ応用倫理学』（広島大学応用倫理学プロジェクト研究センター訳）丸善出版事業部, 2007年 (訳者代表)
ルートヴィヒ・ジープ著『ジープの承認論』こぶし書房, 2019年 (訳書)

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