山吉盛典

山吉盛典は、天保6年（1835年）9月、米沢藩士・林辺忠政の次男として誕生しました。幼名は佐久馬といい、後に山吉家に養子入りしたため、赤穂浪士討入で吉良方として戦った山吉新八の血縁にあたります。明治元年（1868年）、養父から家督を相続し、米沢藩主上杉茂憲の小姓や権少参事公用人などの役職を務めました。

明治維新後の廃藩置県に伴い、山吉は明治政府に出仕し、明治8年（1875年）から明治15年（1882年）にかけて福島県の権令（県令）を務めました。福島県権令時代には、県内の発展に大きく貢献し、特に安積疏水の建設事業に尽力しました。安積疏水は、猪苗代湖の水を安積平野に引く大規模な灌漑用水路であり、その建設は地域住民の生活と農業生産に大きな影響を与えました。

山吉盛典の名前が歴史に刻まれる出来事として、明治11年（1878年）5月14日に発生した紀尾井坂の変が挙げられます。その日の早朝、山吉は内務卿大久保利通を私邸に訪問し、安積疏水に関する事柄について協議しました。しかし、その数時間後、大久保は出仕途中に暗殺されてしまいます。結果として、山吉は大久保が暗殺される直前に言葉を交わした最後の人物となりました。

この会談の際、大久保が語った言葉は、山吉によって『済世遺言』としてまとめられ、後世に伝えられています。この遺言は、大久保の政治思想や国家観を知る上で貴重な資料とされています。山吉盛典は、地方行政官としての功績に加え、この出来事によって、歴史上の重要な人物として認識されるようになりました。

山吉盛典は、明治35年（1902年）7月3日にこの世を去りました。その功績が認められ、亡くなった翌日の7月4日には、従四位が贈られています。山吉の人生は、激動の時代の中で、地方行政に尽力した人物の代表例として、後世に語り継がれています。

もう一度検索