山崎兵八

山崎兵八の生涯と二俣事件

山崎兵八（やまざき ひょうはち、1914年 - 2001年）は、日本の警察官であり、特に二俣事件における内部告発者として知られています。彼の行動は、警察の非倫理的な捜査方法や冤罪の問題を浮き彫りにし、その影響は大きいと言えます。

経歴

静岡県周智郡熊切村出身の山崎は、戦後間もなく巡査として警察に勤務。1948年頃には二俣警察署に配属されました。彼は、焼け野原の浜松から戦災孤児を救うなど、その人柄を示すエピソードも残されています。彼の日々は、単なる警察官としての業務を超え、地域社会への貢献も忘れない温かなものでした。

二俣事件の捜査

1950年1月6日に発生した二俣事件では、山崎が国家地方警察静岡県本部の刑事として捜査に当たりました。この事件は、未だ犯人が特定できない中、山崎の担当した少年がアリバイがないとされ、捜査の焦点となります。しかし、山崎は改めて調査を行い、少年には確実なアリバイが存在することを見抜きました。彼は捜査主任にその旨を報告しましたが、捜査主任は独自の判断で少年を逮捕し、拷問による自白を強要しました。この状況を見て、山崎は苦悩し、非人道的な捜査方法を告発することを決意しました。

拷問捜査の告発

事件の審理が進む中で、山崎は読売新聞に告発の手紙を送り、少年の冤罪を広く知らせようとしました。告発内容には、自白が拷問によって強いられたこと、そして現場の靴跡と少年のサイズの不一致などが記載されました。この告発記事は大きな反響を呼び、公判は再調査を余儀なくされました。しかし、その結果、山崎は警察から反発を受け、辞職を迫られました。

偽証罪での逮捕と精神鑑定

翌年、少年の判決が下された際、山崎は偽証罪で逮捕され、精神異常の疑いもかけられました。精神鑑定を受けた結果、「妄想性痴呆症」と診断されました。この鑑定に関しては、不正な手段で結果を引き出そうとした疑惑も指摘されています。最終的に彼は不起訴となり、釈放されましたが、警察での地位を失う結果となりました。

無罪判決とその後

1957年、少年の第二審が東京高裁で行われ、逆転無罪が言い渡されました。釈放された少年は山崎の家を訪れ、感謝の意を示しましたが、山崎の生活は一変していました。失職後、彼は新聞配達などで生活を支え、家族は困窮を余儀なくされました。さらに、事件に関連する自宅が全焼するなどの困難も経験しました。

最後の時

1970年に長男の仕事に伴い愛知県に移住しましたが、彼の心には常に故郷や過去の出来事が刻まれていました。2001年、山崎は87歳で他界しますが、彼の行動は日本の冤罪問題に大きな影響を与え続けています。

著書

彼は、生涯にわたり二俣事件に関する著作を残しており、特に『拷問捜査 幸浦・二俣の怪事件』は注目されています。彼の言葉や行動は、今でも多くの人々に影響を与えています。

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