山崎紀子

山崎紀子：大阪・九条でミニシアター文化を支える支配人

大阪府大阪市東住吉区に生まれ育った山崎紀子氏は、大阪市西区九条にあるミニシアター、「シネ・ヌーヴォ」の支配人を長年にわたり務めている人物です。映画を愛し、その魅力を多くの人々に伝え続ける彼女の歩みは、関西におけるインディペンデント映画文化の歴史と深く結びついています。また、映画監督として知られる山崎樹一郎氏は、彼女の実弟にあたります。

映画との幼い頃の出会い

1977年に生を受けた山崎氏にとって、映画は子供の頃から身近な存在でした。地元の東住吉区にあった「タナベキネマ」（2012年閉館）には、正月になると家族で足を運び、『男はつらいよ』シリーズをはじめとする様々な作品を楽しんだといいます。この時期に培われた映画への親しみや、映画館という空間への特別な思いが、後のキャリアに繋がっていくことになります。

画家から映画館の道へ

当初、山崎氏は美術の道を志し、大阪美術専門学校で油絵を専攻していました。しかし、専門学校時代に梅田花月劇場内にあった夜間営業の映画館「シネマワイズ」でアルバイトをした経験が、彼女の進路に大きな影響を与えます。そこで映画を上映すること、観客を迎えることの面白さに触れた山崎氏は、次第に画家ではなく映画館そのものへの関心を深めていきました。専門学校卒業後の2001年、彼女は市民出資によって1997年に開館したシネ・ヌーヴォのスタッフとして働き始めます。

シネ・ヌーヴォの運営を担う

シネ・ヌーヴォでの経験を積むこと約7年。2008年、当時の支配人が結婚により退職したことを機に、山崎氏はその後任として支配人に就任しました。支配人の業務は、文字通り映画館の運営全般にわたります。上映作品の選定、カウンターでの接客業務、上映に必要なフィルムの手配など、多岐にわたる役割をこなしています。特に上映作品の決定は、代表の景山理氏と共に慎重に行われる重要な仕事です。山崎氏が支配人となる少し前、シネ・ヌーヴォは従来の新作中心のプログラムから、特定のテーマや監督に焦点を当てた特集上映を主体とする方針へと大きく転換しており、彼女はその新しいプログラムを現場で支え、育てていくことになります。

関西ミニシアター界における存在

関西地方のミニシアターでは、女性の支配人や館長が活躍する例が多く見られます。京都市の京都みなみ会館の吉田由利香氏、大阪市のシアターセブンの福住恵氏、シネマート心斎橋の横田陽子氏、神戸市の元町映画館の林未来氏といった面々がおり、山崎氏もその中心的な一人です。2014年12月には、彼女らが集まり「映画館女子ガールズトーク in Xmas」というイベントを開催しました。この場では、若者の映画館離れという課題や、映画館ならではの魅力をどのように発信していくかについて、それぞれの立場から活発な意見交換が行われ、ミニシアター文化の未来に向けた連携の重要性が示されました。

ユニークな企画と情熱

山崎氏は、シネ・ヌーヴォならではのユニークな企画も実現させています。2016年5月には、フランスのアニメ映画『パリ猫ディノの夜』を軸とした猫映画特集を開催。この企画では、なんと山崎氏の愛猫「まり」が一日限定の“一日支配人”を務め、来場者に喜びと驚きを提供しました。同年時点で、彼女は7名のスタッフと共に、シネ・ヌーヴォという大切な文化拠点の日々の運営を切り盛りしていました。自身が影響を受けたり、憧れを抱いたりした映画館として、かつて存在した梅田ガーデンシネマや、シネ・ヌーヴォと並び称されることの多いミニシアター、第七藝術劇場の名前を挙げています。

結びに

山崎紀子氏は、幼い頃からの映画体験を原点に、画家という別の道を歩みながらも映画館の魅力に惹きつけられ、大阪のミニシアター、シネ・ヌーヴォの支配人としてその運営と文化発信の中心を担っています。多岐にわたる業務をこなし、関西の他のミニシアターとの連携を深め、時には愛猫をも巻き込んだユニークな企画を実行するなど、映画への深い情熱と実行力をもって、ミニシアターという場の灯を守り続けています。彼女の存在は、多様な映画と観客を結びつけるミニシアター文化にとって、欠かせないものと言えるでしょう。

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