山崎裕 (撮影監督)

山崎 裕

山崎 裕（やまざき ゆたか、1940年 - ）は、日本の映画撮影監督。長年にわたり、独特の視点と卓越した技術で数多くの映像作品を生み出してきた、日本映画界を代表する撮影監督の一人である。

日本大学芸術学部を卒業後、1965年に記録映画『肉筆浮世絵の発見』で撮影技師としてのキャリアをスタートさせた。キャリア初期は主にテレビドキュメンタリーや記録映画、CMといった分野で撮影監督として活躍。そこで培われたリアリズムへの深い洞察と、被写体の本質を捉えるシャープな眼差しは、その後の劇場用映画における仕事にも大いに活かされている。

彼のフィルモグラフィは非常に多様性に富むが、中でも特筆すべきは、映画監督・是枝裕和との長年にわたる密接な協業である。是枝監督の初期のドキュメンタリー作品から、世界的に評価された劇場用映画に至るまで、数々の重要作品で撮影を担当し、その独特な世界観や登場人物たちの繊細な感情表現を映像として具現化する上で不可欠なパートナーシップを築いてきた。

是枝作品における主な撮影担当作品には、『ワンダフルライフ』（1999年）、『DISTANCE』（2001年）、『沙羅双樹』（2003年）、『誰も知らない』（2004年）、『花よりもなほ』（2006年）、『歩いても 歩いても』（2008年）、『奇跡』（2011年）、『海よりもまだ深く』（2016年）などがあり、いずれも日本映画史に残る傑作として知られている。

山崎は撮影監督としての第一線での活動に加え、新たな分野にも積極的に挑戦している。2010年には自身初の劇場用長編映画『トルソ』で、監督、脚本、撮影を一人で手がけ、多角的な才能を示した。また、2013年のドキュメンタリー映画『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』ではプロデューサーも務めるなど、映画製作の多岐にわたる側面に深く関与している。2018年には舞台演出家とのコラボレーションである『柄本家のゴドー』で演出・撮影を担当するなど、その活動範囲は映像作品にとどまらない。

さらに、彼は日本におけるドキュメンタリー文化の振興にも献身しており、2001年からは「座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」のプログラムディレクターとして、質の高いドキュメンタリー作品を広く紹介し、議論を深める場を提供し続けている。

山崎裕が撮影を手がけた作品は、是枝監督作品に限らず多岐にわたる。劇映画、ドキュメンタリー、短編など、ジャンルを問わずその手腕を発揮している。

以下に、彼の主な撮影作品の一部を挙げる。

『カナリア』（2004年）
『恋するマドリ』（2007年）
『たみおのしあわせ』（2008年）
『俺たちに明日はないッス』（2008年）
『ANPO』（2010年）
『裸の夏』（2011年）
『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』（2012年）
『フタバから遠く離れて Nuclear Nation』（2012年）
『樹海のふたり』（2013年）
『ひろしま 石内都・遺されたものたち』（2013年）
『2つ目の窓』（2014年）
『いしぶみ』（2015年）
『広河隆一 人間の戦場』（2015年）
『FAKE』（2016年）
『断食芸人』（2016年）
『永い言い訳』（2016年）
『焼肉ドラゴン』（2018年）
『コンプリシティ/優しい共犯|コンプリシティ_優しい共犯』（2020年）
『海辺の金魚』（2021年）
『ゆめのまにまに』（2022年）
* 『春の画 SHUNGA』（2023年）

これらの作品リストからも明らかであるように、山崎裕は常に新しい表現に挑戦し、それぞれの作品世界に寄り添う映像を創造してきた。彼のレンズを通して切り取られた光景は、観る者の心に深く響き、物語のリアリティを力強く支える。また、2016年にはテレビ東京のドキュメンタリードラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』に出演するなど、活動の幅を広げている。

撮影監督として日本映画界に確固たる足跡を残し、同時に監督、プロデューサー、そしてドキュメンタリーの振興者としても貢献する山崎裕は、その存在自体が日本映画の多様性と深さを示すものと言えるだろう。彼の今後のさらなる活躍が期待される。

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