山形季央

山形季央とは

山形季央（やまがたとしお、1953年2月25日生まれ）は、日本の著名なアートディレクターであり、グラフィックデザイナーです。特に資生堂での長年にわたる活動を通じて、そのブランドイメージの形成に深く関わりました。また、教育者としても、多摩美術大学をはじめとする複数の教育機関で教鞭を執り、多くのデザイナーを育てています。

経歴と資生堂での活躍

山形氏は1953年に大阪府大阪市で誕生しました。大阪芸術大学芸術学部デザイン学科で学び、1976年に卒業後、株式会社資生堂にグラフィックデザイナーとして入社しました。資生堂でのキャリアは、日本の広告デザイン史において特筆すべきものです。

1982年、山形氏は初代アートディレクターとしてパリに駐在するという重要な役割を担います。この時期、フランスを代表するイメージクリエイター、セルジュ・ルタンスと協働し、資生堂のグローバル・イメージ・キャンペーンを共に創り上げました。この取り組みは1986年まで続き、資生堂の国際的なブランドイメージ確立に大きく貢献しました。この海外での経験は、山形氏のその後の活動に多大な影響を与えたと言えるでしょう。

日本への帰国後、1987年からはアートディレクターとして、化粧品ブランド「イプサ」や「資生堂ホワイテス」といった新しいブランドの立ち上げに深く関わりました。また、資生堂の国内外における主要ブランドの広告制作やコミュニケーションデザインを幅広く手掛けました。その活動は資生堂内部に留まらず、写真家・上田義彦氏や田原桂一氏などの写真集デザインも行うなど、多岐にわたる分野でその才能を発揮しました。

資生堂では、管理職としても重要なポストを歴任しました。2004年には宣伝部デザイン統括部長に就任し、組織全体のデザイン戦略を指揮しました。2005年からは宣伝制作室長・部長として、クリエイティブ部門を統括する立場となりました。この時期には、今日でも資生堂のコーポレートスローガンとして知られる「一瞬も一生も美しく」の開発・提案にも携わっています。

教育者としての活動

資生堂でのキャリアと並行して、山形氏は教育分野でも活動を開始します。2002年からは桑沢デザイン研究所で講師を務め（2011年まで）、2004年からは武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科でも講師を務めました（2010年まで）。

2011年に資生堂を退社した後、山形氏は多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科の教授に就任し、本格的にデザイン教育の第一線で後進の指導にあたりました。同年、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科の客員教授にも迎えられています。

多摩美術大学では2020年まで教授を務め、多くの学生を育成しました。教授退任後も、引き続き同大学の大学院客員教授として、研究・教育活動に関わっています。

主な作品と受賞歴

山形氏の代表的な仕事は数多くあります。

イプサ・ブランド創設時のアートディレクション（1987年）
田原桂一写真集『艶のかたち金沢』ブックデザイン（1994年）
ダンスカンパニー山海塾のグラフィックデザイン（1994年より継続）
上田義彦写真集『AMAGATSU』企画、ブックデザイン（1995年）
今道子写真集『Michiko Kon』ブックデザイン（1996年）
資生堂オイデルミン・リニューアルのアートディレクション（1998年）
十文字美信写真集『わび』ブックデザイン（2002年）
資生堂コーポレートスローガン「一瞬も一生も美しく」の開発・提案（2005年）

これらの活動を通じて、国内外で高い評価を得ています。

主な受賞歴には以下のようなものがあります。

東京ADC賞（1994年、1996年、2000年）
ニューヨークADC金賞（1998年）
東京ADC会員賞（2007年）

著作と研究

山形氏は自身のデザイン実践や研究成果をまとめた著書や論文も発表しています。

単著

『新世代平面設計家山形季央的設計世界』
『山形季央世界のグラフィックデザイン91』
『日本のグラフィック100年』
『STORY』

共編著

『Graphic Wave〈1996〉青木克憲/佐藤卓/山形季央』
『新版 graphic design 視覚伝達デザイン基礎』

論文

「資生堂の唐草込められた理念」（2004年）
* 「セルジュルタンスという戦略」（2005年）

これらの著作や論文は、山形氏のデザインに対する深い洞察や、歴史的・理論的な探求を示すものです。

まとめ

山形季央氏は、資生堂における革新的なアートディレクション、特にセルジュ・ルタンスとの協業によるグローバル戦略の成功、そしてイプサなどの新ブランド立ち上げを通じて、日本のグラフィックデザイン、広告分野において確固たる地位を築きました。また、多摩美術大学教授としての長年の教育活動は、次世代のデザイナー育成に多大な影響を与えています。その活動は広告、ブランディング、ブックデザイン、舞台芸術など多岐にわたり、数多くの受賞歴がその業績の大きさを物語っています。

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