山木幸三郎

山木幸三郎

山木幸三郎（やまき こうざぶろう）は、日本の音楽史において、ギタリスト、作曲家、そして編曲家として多大な貢献をした人物です。1931年4月18日に東京都で生を受け、そのキャリアは長年にわたり、特にジャズオーケストラ「宮間利之とニューハード」の中心メンバーとして知られています。彼は2018年12月26日、87歳で惜しまれつつこの世を去りました。

音楽キャリアの始まり

山木の音楽家としての道のりは、比較的早い時期に始まりました。17歳を迎える頃、具体的には1950年には、彼は既にプロフェッショナルとして音楽の世界に足を踏み入れていました。若き才能はすぐに頭角を現し、翌1951年には、トランペッターの高見弘らと共にジャズコンボ「グレーシー5」を結成するなど、積極的に活動の場を広げていきました。この初期の活動は、彼の後のキャリアの礎を築くことになります。

宮間利之とニューハードでの軌跡

山木幸三郎のキャリアにおいて、最も重要かつ長期間にわたる活動拠点となったのが、指揮者・サクソフォニストの宮間利之が率いるジャズオーケストラです。1953年、彼は当時「ジャイブ・エーセス」という名称で活動していたこの楽団に入団しました。楽団は1958年に「宮間利之とニューハード」へと改称され、以後、山木はこの名門ビッグバンドの屋台骨を支える主要メンバーとして、半世紀以上にわたりその活動を共にしました。

彼は単に卓越したギタリストとしてアンサンブルに加わるだけでなく、作編曲家としてもその才能を遺憾なく発揮しました。ニューハードが追求する革新的で挑戦的なサウンドの多くに、山木の音楽的センスとアレンジメントが色濃く反映されています。ビッグバンドのダイナミックな響きの中で、ギターという楽器が持つ可能性を引き出し、楽曲全体に深みと彩りを加える彼の演奏は、高い評価を受けました。また、彼の手がけた楽曲や編曲は、ジャズというジャンルを基盤としつつも、ポピュラー音楽の要素を巧みに取り入れ、ニューハード独自の音楽性を際立たせる上で極めて重要な役割を果たしました。彼の多才さがあってこそ、ニューハードは日本のジャズシーンにおいて独自の地位を確立し、多くの聴衆を魅了し続けることができたと言えるでしょう。

外部への楽曲提供活動

「宮間利之とニューハード」での活動と並行して、山木幸三郎は日本のポピュラー音楽界にも大きな足跡を残しています。彼は多くの著名な歌手やアーティストのために作曲や編曲を手がけ、その才能はジャズの世界に留まらず広く求められました。特に、その情感豊かな歌声で知られるアルゼンチン出身の歌手、グラシェラ・スサーナとは数多くの共同作業を行いました。彼女の代表曲やヒット曲の多くに、山木の繊細かつ力強い編曲が用いられ、楽曲の持つドラマ性を一層高めています。

以下に、彼の作曲または編曲による主な提供作品の一部を挙げます。

グラシェラ・スサーナ
「愛の音」（編曲）
「人が行く」（作曲・編曲）
「愛さないの愛せないの」（作曲・編曲）
「涙の時計」（編曲）
「アドロ」（編曲）
「粋な別れ」（編曲）
「雪が降る」（編曲）
「白い想い出」（編曲）
「街燈」（編曲）
「仕方ないわ」（作曲・編曲）
「こんなに遠くまで」（編曲）
「愛の怖れ」（編曲）
グラシェラ・スサーナ・菅原洋一
「愛はすべてを変える」（作曲・編曲）
坂本スミ子
「ブルー・ナイト・イン・ヨコハマ」（編曲）
しばたはつみ
「南風のサンバ」（作曲・編曲）
日吉ミミ
「捜索願」（作曲・編曲）
和田アキ子
* 「どしゃぶりの雨の中で」（編曲）

これらの楽曲リストは、彼の仕事が単にビッグバンドのアレンジに留まらず、歌謡曲やポップスといった幅広いジャンルに及び、その手腕が多くのアーティストから信頼されていたことを物語っています。彼の編曲は、原曲のメロディーラインを尊重しつつ、オーケストレーションによって新たな生命を吹き込むことに長けていました。

晩年と残した功績

日本の音楽シーンの第一線で長きにわたり活躍を続けた山木幸三郎は、2018年12月26日、不整脈のため87歳でその波乱万丈な生涯に幕を下ろしました。しかし、彼が「宮間利之とニューハード」のギタリストとして奏でた唯一無二の音色、そして作編曲家として生み出した数々の独創的な作品は、今も多くの音楽ファンに聴き継がれています。

彼の「宮間利之とニューハード」における半世紀以上にわたる貢献は、日本のビッグバンドジャズの歴史において非常に重要な意味を持っています。また、彼が遺したポピュラーソングのアレンジメントは、日本の歌謡曲黄金期を彩る上で不可欠な要素の一つであり、その音楽的遺産は今後も日本の音楽文化の中で語り継がれていくことでしょう。山木幸三郎は、日本の音楽界に多大な功績を残した真のアーティストでした。

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