山本和夫

山本和夫：詩と児童文学の世界を紡いだ作家

山本和夫（やまもと かずお、1907年4月25日 - 1996年5月25日）は、日本の児童文学作家、詩人です。福井県遠敷郡松永村（現在の小浜市）に生まれ、旧制小浜中学校、東洋大学専門学部倫理学東洋文学科を卒業しました。妻は女性史研究家で詩人の山本藤枝です。

若き日の詩作と文学活動

中学時代から詩作を始めた山本は、大学在学中に詩誌『白山詩人』を創刊。赤松月船、勝承夫、大村主計らと詩を発表し、処女詩集『仙人と人間との間』を刊行しました。1932年には三省堂編集部に勤務しながら文学活動を続け、同人誌『星座』に参加。同誌に連載した『国木田独歩ノート』で全国同人誌クラブ賞を受賞しました。

しかし、評論が反戦的とみなされ、人民戦線事件で検挙されるという経験もしました。1938年には詩集『戦争』が文芸汎論賞を受賞しましたが、その後、陸軍報道班員としてビルマへ派遣され、戦時中は戦意高揚の作品を執筆しました。この時期には、海音寺潮五郎や井伏鱒二らとも行動を共にしました。

戦後の転身と児童文学への情熱

戦後、山本は一時沈黙しましたが、1948年に児童文学作家として活動を再開しました。1955年には児童文学雑誌『トナカイ村』を創刊し、偉人伝を多く執筆しました。1961年には日本児童文学者協会理事長に就任し、児童文学の発展に大きく貢献しました。

代表作には、小学館文学賞を受賞した大作『燃える湖』（1964年）や、サンケイ児童出版文化賞大賞を受賞した少年詩集『海と少年』（1975年）、赤い鳥文学賞を受賞した詩集『シルクロードが走るゴビ砂漠』（1985年）などがあります。また、1988年には詩集『虚空』を刊行するなど、生涯にわたり詩作も続けました。

晩年と文化活動

晩年は、福井県立若狭歴史民俗資料館（現在の福井県立若狭歴史博物館）館長を務めました。また、母校である若狭高校の校歌作曲を山田耕筰に依頼するなど、文化活動にも尽力しました。東洋大学の応援歌作詞者選考では、勝承夫、尾張真之介と共に審査員を務めました。

新潟県を舞台とした合唱曲『親知らず子知らず』、『阿賀野川』は、中学校の合唱コンクールでよく歌われています。

山本和夫の足跡を辿る

年譜

1907年：福井県遠敷郡松永村に生まれる。
1926年：東洋大学に入学。
1929年：初の著書、短歌集『雲と人間と百舌鳥』を刊行。
1935年：岡村フジエ（山本藤枝）と結婚。
1937年：反戦的な評論や詩の内容で検挙される。
1941年：陸軍報道班員としてビルマへ。
1945年：終戦後、故郷で文化活動を行う。
1948年：東京で文筆活動を再開。
1955年：児童文学雑誌『トナカイ村』を創刊。
1961年：日本児童文学者協会理事長に就任。
1964年：『燃える湖』で小学館児童文学賞を受賞。
1975年：詩集『海と少年』でサンケイ児童出版文化賞大賞を受賞。
1985年：詩集『シルクロードが走るゴビ砂漠』で赤い鳥文学賞を受賞。
1988年：福井県立若狭歴史民俗資料館館長に就任。
1996年：逝去。

詩碑「青の村」

小浜市門前の明通寺境内に、山本和夫の詩碑「青の村」が建立されています。これは、戦後、山本が若者たちと展開した文化運動を記念したもので、谷口吉郎の設計によるものです。

主な詩歌集

『仙人と人間との間』（1929年）
『花のある村』（1936年）
『戦争』（1938年）
『海と少年』（1975年）
『シルクロードが走るゴビ砂漠』（1985年）
『虚空』（1988年）

主な著書

『山ゆかば 武漢攻略戦記』（1939年）
『大将の馬』（1941年）
『ガンジー 裸の聖者』（1952年）
『燃える湖』（1964年）
『児童文学へのアプローチ』（1966年）

主な作詞曲

親しらず子しらず
ひめゆりの塔
阿賀野川

参考文献

『山本和夫年譜』（小畑昭八郎・編 鶉山文庫 一九七〇年）
* 『青の村ー山本和夫文学ガイド』（保坂登志子・編著 かど書房 一九八九年）

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