山本多助

山本 多助（やまもと たすけ）

山本多助は、1904年7月5日に釧路市で生を受け、1993年2月13日に88歳で亡くなったアイヌの文化伝承者および著述家です。彼はアイヌ文化の研究と伝承に尽力し、その業績は今に残る貴重な資料となっています。

人物・生涯

彼は釧路アイヌ第23代首長であるトミランクル（山本太吉）と母浦見トワの次男として育ちます。幼少期から彼の民族文化に対する関心は強く、特に古老たちの口伝えを聞き、それを文字に起こす作業に取り組みました。1922年の樺太訪問では更に多くの伝承を吸収し、アイヌ文化を保存するために尽力しました。

1937年、屈斜路湖近くに民芸品の製造・販売を行う店舗を開店。ここでヒグマの木彫りなど独自のアイヌの民芸品を生産し、先駆者としての地位を確立します。その後、1940年には著書『阿寒国立公園とアイヌの伝説』を出版し、アイヌ文化の理解を広めました。

1942年、彼は海軍軍属としてトラック島に従軍。その後の戦傷により右目を失明し帰国します。帰国後は1946年に北海道アイヌ協会の初代支部長に就任し、彼の活動は一層活発化しました。1948年には帯広市に移住し、北人民芸社を設立しますが、アメリカへの木彫り品の商談が破談となり、会社は廃業を余儀なくされました。

その後も民芸品製造やアイヌ語の研究に従事し、1972年には著者の新谷行と出会い、彼に大きな影響を与えました。同年8月には日本人類学会でのシンポジウムに参加し、アイヌ研究における姿勢を批判するなど、文化の保護に尽力します。1973年には「ヤイユーカラアイヌ」民族学会の創立に関与し、1976年にはフランス・パリのユネスコ本部で自身の伝承を上演しました。

彼は1985年に北海道文化賞を受賞し、その功績が広く評価されました。1993年、彼は88歳で生涯を閉じましたが、アイヌ文化への貢献は今でも語り継がれています。

家系

彼の家系は代々釧路アイヌの首長を務めており、多助自身も第24代首長にあたります。彼には6人兄弟がいましたが、多助だけが成人しました。長女ツルや長男太平は幼少期に亡くなり、次男の多助は特に文化活動に専念しました。彼の次男と結婚したフデの娘は、アイヌ文様刺繍家として活躍し、文筆活動も行っています。

兄弟やその家族の多くもアイヌ文化の継承や発展に寄与しており、多助の存在はその基盤になっています。

著書・参考文献

彼が著した書籍には以下のようなものがあります：

• - 『阿寒国立公園とアイヌの伝説』（1940年）
• - 『阿寒国立公園とアイヌの話』（1974年）
• - 『アイヌ語小辞典』（1976年）
• - 『怪鳥フリュー カムイ・ユーカラ』（1978年）
• - 『カムイ・ユーカラ アイヌ・ラッ・クル伝』（1993年）など。

彼の功績はアイヌ文化の復興に寄与し、今日のアイヌ民族運動の基礎を築いた人物として語り継がれています。

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