新谷行

新谷 行（しんや ぎょう）: 詩人・文芸評論家・歴史家

新谷行（1932年 - 1979年）は日本の昭和時代における詩人、文芸評論家、そして歴史家として名を馳せています。彼の本名は新屋英行で、北海道出身であり、馬術家の兄を持つ一族の生まれです。妻である上杉浩子もまた詩人であり、二人の文学的な交流は多くの作品に影響を与えました。

生い立ちと教育

新谷は留萌郡小平蘂村（現在の小平町）に生まれました。彼は家族の中で五男として育ち、1953年には留萌高等学校を卒業しています。その後、中央大学の法学部に進学するために上京し、社会に出る準備を整えました。大学卒業後には著名な詩人金子光晴を訪問し、出版社で編集者としてのキャリアをスタートさせました。この頃から文学活動にも力を入れるようになります。

1959年には同人雑誌『詩域』を創刊し、このことは彼の文学的な存在感を高める大きなステップとなりました。さらに1964年には『あいなめ』に参加し、多くの著名な作家と交流を深めました。しかし、1968年に出版社を辞めたことから、彼は生活のために仕事をしながら自らの作風を確立する道を選びます。この時期からはアイヌ文化への関心が強まり、アイヌの伝承やユーカラ（物語）を研究する姿勢が見え始めました。

アイヌ文化の探求

新谷は1971年、北海道を旅行した際に長編詩『シャクシャインの歌』を書き上げます。この作品を通じて、アイヌ民族の歴史への強い関心が窺えます。それ以降、彼はアイヌ指導者たちとの接触を深め、民族の歴史を探究していきます。特に、1972年の取材旅行は彼の人生において重要な転機となり、釧路や平取などを回り、アイヌの存在を積極的に広める活動を行いました。

1972年にはアイヌ解放同盟と共同で公開質問状を発表し、アイヌ民族に関する誤った考え方を批判しました。この活動は彼の思想を広め、またアイヌ民族の歴史を新たな観点から照らし出すものとなりました。

アイヌ史の再考

新谷はアイヌの歴史を江戸時代以前に遡及させ、彼らが和人の侵略に対して無抵抗であったわけではないことを示すことを目指しました。彼はアザマロやアテルイなど、歴史上の有名なアイヌの抵抗を一つの流れとして捉え、彼らの文化を研究する意義を強調しました。これにより今までの歴史的理解に新たな光を当てました。

著作と影響

新谷行の著作は多岐にわたり、代表作には『新谷行詩集　水平線』や『アイヌ民族抵抗史』、『ユーカラの世界』などがあります。彼の執筆は、アイヌ民族に対する誤解や偏見を取り除くための重要な役割を果たしました。彼はまた、知識人や研究者によるアイヌ民族への深刻な批判を行い、彼らの文化に対する理解を促進しました。

結論

新谷行は、詩人としてだけでなく、アイヌ民族の歴史を再考する歴史家としても大きな足跡を残しました。彼の仕事は今日においても関連が深く、アイヌ文化の復権や理解のために尽力し続けています。新谷行の人生と業績は、現在も多くの人々に影響を与え続けているのです。

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