山本拙郎

山本拙郎について

山本拙郎（やまもと せつろう、1890年2月22日 - 1944年9月13日）は、20世紀の日本における著名な建築家であり、特に住宅設計において非常に重要な役割を果たしました。彼は高知県香美郡（現在の南国市）で生まれ、高知中学校、そして第三高等学校を経て、1914年に早稲田大学理工学部建築学科に入学しました。当時、私立大学に進学することは異例の選択でしたが、いとこであり早稲田大学教授の山本忠興のすすめが大きな影響を与えたと考えられています。山本は1917年に早稲田大学を卒業し、その後、住宅設計施工会社「あめりか屋」に入社しました。

彼はあめりか屋で5年後に設計部の技師長に就任し、その後、住宅に対する考え方を広めるために執筆活動にも力を入れました。特に、住宅改良会の機関誌『住宅』の編集や寄稿に加え、著書『家を住みよくする法』を通じて啓蒙活動を展開しました。1925年には、建築家遠藤新との論争、「拙新論争」が発生しました。この論争は、住宅のデザインに関する異なるアプローチを示すもので、山本は施主の意向を重視した住みやすさを優先する立場を取っていたのに対し、遠藤は家具まで統一的にデザインした住宅を目指していました。この論争は日本の住宅史において重要な出来事とされています。

1928年にはあめりか屋の責任者に就任しますが、1931年には事業不振の責任を取って経営を譲ります。しかし、1939年頃まで彼はあめりか屋に籍を残していました。その間に、同潤会からの嘱託として住宅相談を担当したり、満州や上海へ渡って社宅や日本人住宅の設計を行いました。彼の最晩年には上海での脳溢血により1944年に亡くなりました。

作品

山本が設計した住宅の具体例は多くありますが、残念ながらその多くは資料が乏しく、明確に山本の名前が挙がる作品は限られています。彼の代表作には、次のいくつかがあります。

• - 和田豊治別荘（1920年、別府）: 後に中山悦治の所有となり、現在は現存していません。
• - 山本忠興邸「電気の家」（1922年）: いとこである山本忠興の自邸で、当時の先進的な電化生活を実践しました。現存せず。
• - 富士見町教会（1929年）: 関東大震災後の再建も行い、現在は考えられていないようです。
• - 渡辺甚吉邸（1934年）: 設計こそ他の建築家が担当しましたが、山本が全体計画や照明などに関与したとされています。現在は国の登録有形文化財として大切に保存されています。

人物像

山本拙郎は「日本最初の住宅作家」として評価され、その作品は温和で素直な作風で知られています。彼の温厚な性格は、建築物に対する慎重なアプローチに現れており、住宅設計においても施主の意向を重視していました。また、彼は住宅設計競技を提案し、多くの若手建築家に影響を与えました。

彼の影響力は、後の建築家にも及び、吉村順三は中学生のころから彼の作品に憧れを抱いていたと語っています。さらに、山本は日本女子大学などで講師を務め、次世代の建築家たちを育成する役割も果たしました。

あめりか屋について

あめりか屋は1909年に橋口信助が創立したハウスメーカーで、アメリカから持ち帰った組立式の住宅を基盤に、赤坂に外国人向けの貸家を設置して営業を開始しました。主にアメリカ風の中小住宅を紹介し、品質の高さで顧客を惹きつけました。山本の活動は、その後の日本の住宅業界において重要な影響を与え続けています。

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