遠藤新

遠藤新（えんどう あらた）

遠藤新は、1889年に福島県で生まれ、1951年に生涯を閉じた日本の建築家です。彼は、巨匠フランク・ロイド・ライトに師事し、その建築思想とデザインを深く学びました。ライトの空間構成に対する考え方を自身の設計活動に取り入れ、数々の建築作品を生み出しました。ライトの設計事務所で経験を積んだ後、独立してからもライトのスタイルを追求し続け、「ライトの使徒」とも呼ばれることがあります。その一方で、ライトの模倣に終始しているとの批判を受けることもありましたが、近年では、遠藤新のヒューマンスケールで広がりのある空間設計に対する再評価が進んでいます。

生涯

1889年、遠藤新は福島県宇多郡福田村（現在の相馬郡新地町）に誕生しました。相馬中学校、第二高等学校を経て、東京帝国大学建築学科を卒業。卒業後間もなく、東京駅の設計者である辰野金吾を批判したことで、早くもその建築に対する情熱と独自の視点を示しました。その後、明治神宮の建設に関わった後、1917年にフランク・ロイド・ライトが設計を請け負った帝国ホテルの設計事務所に勤務しました。1919年にはライトとともに渡米し、翌年帰国。1921年まで、帝国ホテルの設計・監督を行うライトの助手として活躍しました。ライトが建設費用の問題で解雇され帰国した後も、遠藤新は他の弟子たちと共に帝国ホテルの完成に尽力しました。

関東大震災後には、応急建築の必要性に応え、賛育会産院・乳児院、銀座ホテル、日比谷世帯の会マーケットなどのバラック建築を手掛けました。また、自由学園や山邑邸など、ライトの基本設計を基にした建築物の完成にも大きく貢献しました。1935年からは満州と日本を行き来しながら設計活動を行い、満州で終戦を迎えましたが、翌年心臓発作で入院し、その後帰国。晩年は、文部省学校建築企画協議会員として、戦後の学校建築のあり方に対する提言を行いました。1951年、心臓病のため東京大学病院で死去。葬儀は、自身の設計作品である目白ヶ丘教会で執り行われました。

建築スタイルと評価

遠藤新は、独立後もライトの設計思想に傾倒し、ライトに通じるデザインの建築を数多く手掛けました。そのため、独自性に欠けるという批判もありましたが、ライトの建築思想を深く理解した遠藤新の作品は、人間的なスケール感と広がりのある空間が特徴であり、多くの人々に愛されてきました。近年では、遠藤新の建築作品は再評価が進み、その功績が改めて注目されています。遠藤新の建築に対する情熱は、息子の遠藤楽、遠藤陶、孫の遠藤現へと受け継がれ、建築家一家として知られています。

拙新論争

遠藤新の建築思想を巡っては、建築家である山本拙郎との間で論争が繰り広げられました。山本拙郎は、遠藤新の建築における調度品までを含めた統一されたスタイルに、居住者の自由が制限されると批判しました。これに対して、遠藤新は、真に優れた建築とは調度品に至るまで統一性を示唆できるものであると反論しました。この論争は、建築における統一性と居住者の自由という、現代にも通じる重要なテーマを提起するものとして、建築史の中で重要な位置を占めています。

主な作品

遠藤新は生涯にわたり、数多くの建築作品を設計しました。その中には、住宅、学校、商業施設など、さまざまな用途の建築物が含まれています。代表的な作品として、自由学園や山邑邸などが挙げられます。

関連文献

遠藤新に関する研究文献は数多く存在します。その中には、彼の建築作品を分析したもの、生涯を追ったもの、また、彼とフランク・ロイド・ライトとの関係性を考察したものなどがあります。これらの文献は、遠藤新の建築思想や活動をより深く理解するために役立つでしょう。

「自由学園女子部の分析を通して“空間意識”を把握する」（船越徹他、建築文化1965年8月号）
「無の探勝 遠藤新の建築作品を巡っての考察試論」（南迫哲也、季刊カラム1984年4月号）
『遠藤新生誕100年記念ー人間・建築・恩恵ー』（INAXギャラリー、1989年）
『建築家遠藤新作品集』（中央公論美術出版、1992年）
『F.L.ライトと弟子達 日本人によるライトの受容と実践』（ギャルリータイセイ、1996年）
『帝国ホテルライト館の幻影ー孤高の建築家遠藤新の生涯』（遠藤陶、廣済堂出版、1997年）

関連項目

遠藤新に関連する人物や建築物、団体は以下の通りです。

阿部貞著
甲子園会館
フランク・ロイド・ライト
アントニン・レーモンド
南信 (建築家)
土浦亀城
田上義也
柴田太郎
岡見健彦
天野太郎
樋口清
吉原正
遠藤楽
星島二郎

外部リンク

* 「自由学園の建築」ほか - ARCHIVE。自由学園の建築に際し、遠藤新が寄稿した手記。

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