山本義正

山本義正：海軍軍人山本五十六の長男の生涯

山本義正（1922年 - 2014年）は、日本海軍の英雄、山本五十六の嫡男として東京で生まれました。幼少期は、父・五十六の転勤に伴い、東京や鎌倉など各地を転居。東京府立一中（現・日比谷高校）への入学を希望する父のために、一家は青山南町へと移り住みました。 五十六は、親しい友人らの助言を受けながら、息子の教育に熱心に取り組んでいました。

しかし、1943年、父・五十六は太平洋戦争で戦死。義正は、父の国葬で喪主を務めました。海軍兵学校を目指しましたが、近眼と肋膜炎のため断念。旧制成蹊高等学校を経て、東京帝国大学農学部に進学しました。父の遺志を継ぎ、海軍を目指しパイロットを志願しますが、近眼のため海軍整備予備学生となりました。

終戦間際の1945年、義正は厚木第三〇二航空隊に配属。そこで「厚木の叛乱」と呼ばれる事件に遭遇します。小園安名率いる航空隊は徹底抗戦を企て、義正は海軍省への連絡要員として派遣されました。海軍省で終戦の状況を説明したことで、義正は「厚木の叛乱」の終結に貢献したのです。その後、大船の航空事務部に転勤し、復員となりました。

戦後、義正は東京大学大学院工学研究科を修了し、北越製紙などに勤務しました。父との思い出を綴った著書『父 山本五十六』は広く読まれ、義正は著述家としても知られるようになりました。 彼の記憶に残るエピソードとして、幼少期の父の温かい姿や、開戦の日、父が戦争の敗北を予感していたという同級生への発言など、貴重な証言が多く残されています。晩年は山本五十六記念館の名誉館長を務め、2014年に肺炎のため逝去しました。

「厚木の叛乱」への関与

義正の海軍整備予備学生としての勤務地は、小園安名率いる厚木第三〇二航空隊でした。終戦間近、小園は徹底抗戦を指示し、義正は彼の行動に疑問を感じていました。終戦の事実を海軍省に伝え、小園の計画を事実上阻止する役割を果たしたのです。義正の証言によると、航空隊全体が騒然としていたわけではなく、小園を中心とした一部の動きであったといいます。この経験は、義正の生涯に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

山本五十六との思い出

義正の記憶の中に鮮やかに残る父・五十六の姿は、蚊帳の外で蚊を叩く姿や、開戦前日の短い別れでした。 開戦の日、義正は同級生に「親父はこの戦争は負けると言って出て行った」と漏らしています。これらのエピソードは、義正が父・五十六を理解し、その生涯を後世に伝える上で重要な役割を果たしました。

山本義正の生涯：まとめ

山本義正は、父・山本五十六の影に隠れがちですが、自らの人生を力強く歩んだ人物でした。海軍兵学校への志望を断念、終戦間際の「厚木の叛乱」への関与、そして父との思い出を記した著書の出版など、激動の時代を生き抜き、その体験を後世に伝える役割を担いました。彼の生涯は、戦争と平和、そして父子の絆を深く考えさせるものです。彼の功績は、単なる山本五十六の息子という枠を超えて、歴史の証人として評価されるべきでしょう。 本書『父 山本五十六』は、彼の生涯を知る上で重要な資料となります。

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