山熊田

山熊田（やまくまだ）

山熊田は、新潟県村上市に位置する大字です。中継川の上流、府屋から18キロメートルほど奥に入った山間部に位置しています。かつては33世帯226人が暮らしていましたが（1958年）、過疎化が進み、2021年7月1日時点では16世帯41人（男性21人、女性20人）となっています。

地理

山熊田は豪雪地帯であり、冬季の積雪は2メートルを超えることも珍しくありません。そのため、かつては雪崩による被害も多く、集落が孤立することもあったと言います。ミズナシ山で発生した「雪蛇」と呼ばれる雪崩により、70軒あった家が13軒にまで減少したという伝承も残っています。

歴史

山熊田の起源は、7軒の「オモダチ衆」と呼ばれる家々だったとされています。これらの家々は村役を世襲し、様々な特権を持っていました。

旧石器時代〜古代

1987年7月には、縄文時代の遺跡から2点の凹み石が発見されました。これらの石の用途は不明ですが、発火具や打器として使われていたと考えられています。

近世

江戸時代の越後国郡絵図には「山ご俣」と表記されています。村高は検地によって決められ、年貢米は「免」と呼ばれる税率をかけて計算されていました。1712年の山熊田村の免は、田畑ともに二ツ五分取でした。これは村上藩領内の他の村々と比較して低い税率でした。山間部の厳しい環境から農業生産が限られていたため、塩木切りなどの副業（作間稼ぎ）が盛んに行われていました。

教育

昭和40年代以降、山北地域では過疎化と少子高齢化が進行し、児童数が減少しました。1972年には中俣中学校山熊田分校が独立し、山熊田小中学校となりましたが、児童数の減少により、1989年に山熊田中学校は大川谷中学校と統合、1992年には山熊田小学校も大川谷小学校に統合されました。

産業・生業

山熊田は山間の奥まった場所に位置するため、農業には不向きな土地でしたが、林業の他に川漁も行われていました。また、飢饉の際には葛の根からヨネカス餅を作り、飢えを凌いでいたと言います。

塩木切り（ショッキ）

塩木切りは、山で伐採した薪木を川に流して運ぶ生業です。山熊田を含む周辺の山間地域では重要な収入源でした。「塩木」の名称は、塩を精製するための薪木として使われていたことに由来すると言われています。地域によって呼び名が異なり、山北地区では「ショッキ」と呼ばれていました。

ぜんまい採り

農業だけでは生活が厳しかったため、山菜のぜんまいを採り、生活の足しにしていました。1985年頃までは、25戸で年間100 - 150貫（400 - 600キログラム）のぜんまいを採取し、50万円以上の収入を得ていました。お金が必要な時は、塩木やぜんまいを担保に資産家からお金を借りていました。

川漁

山北の川では鮭が遡上するため、多くの村で漁が行われていました。そのため、漁場を巡って上流・下流の村同士で揉め事が起こることもあり、訴訟の記録も残っています。山熊田でも同様の揉め事が起きており、1741年には中継村との間で漁具を巡る争いがあったことが記録されています。また、雨乞いのために上流に位置する山熊田の氏神にお参りに行くという言い伝えも残っています。

炭焼き

山熊田は土地の大部分を山が占めているため、炭焼きも重要な産業でした。一時は生計のほとんどを炭焼きに頼っていましたが、輸送手段の確保が必要だったため、道の整備が進むまでは塩木切りが主な仕事でした。

熊とり（シシマキ）

山熊田では、雷と同様に狩猟が盛んで、シシマキ（巻き狩り）による熊とりが行われていました。雷では「日帰り山」のみでしたが、山熊田では「泊まり山」も行われていました。4月17日頃の土用入りの日には、集落の男衆が総出で熊とりに出て、熊祭り（シシマツリ）と称し山神を祀る行事が催されます。熊が獲れないと春祭りが行えないため、熊を捕まえるまで狩りを続けました。熊を捕えた翌日には、シシマツリと呼ばれる行事が催され、熊肉が分配されたり、ナヤ汁と呼ばれる熊の雑肉と豆腐と山菜の味噌煮が振る舞われました。

施設

さんぽく生業の里

山熊田地内には、地域の伝統工芸品である「しな織り」などを活用した地域体験施設「さんぽく生業の里」があります。ここでは、しな織りの見学や、「しな織り」や「あく笹巻き」などの生業体験、赤かぶ漬けや餅つきなどの様々な体験コースが用意されています。また、郷土料理を味わったり、特産品を購入することもできます。

交通

日本海東北自動車道朝日まほろばインターチェンジから車で約1時間30分、国道7号府屋交差点から車で約30分です。かつては新潟交通の路線バスが運行されていましたが、1990年代に廃止され、現在は公共交通機関でのアクセスはできません。

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