山王 (大田区)

大田区山王：歴史と文化が息づく街

東京都大田区山王は、大森駅の西側に位置する、品川区と隣接する地域です。古くからの歴史と、近年まで続く再開発が織りなす独特の雰囲気を持つ、魅力的な町です。

地理と街並み

山王は、池上通りが南北に貫き、東側はJR京浜東北線大森駅西口に面しています。駅周辺はオフィスビルや商店が立ち並び、活気に満ち溢れています。池上通りやジャーマン通りといった主要道路沿いにも多くの商業施設が集中し、複数の商店街が形成されています。一方、池上通りから一本入った路地裏には、昭和のレトロな雰囲気を残す山王小路飲食店街（通称：地獄谷）があり、独特の情緒を感じられます。高台地域は第一種低層住居専用地域に指定され、落ち着いた住宅街が広がっています。現在、大森駅西口再開発計画が進められており、街の更なる発展が期待されています。

歴史と文化

山王という地名は、大森山王日枝神社に由来します。この神社は、中世に比叡山延暦寺の日吉大社から山王権現が勧請されたのが始まりです。江戸時代には、池上通り（当時は平間街道）沿いの宿場町「新井宿」の一部として栄え、歌川広重の「名所江戸百景」にも描かれるなど、古くから景勝地として知られていました。大森駅周辺の山側は将軍家の御狩場、低地部は田畑として利用されていました。

明治時代以降は、鉄道の開通と大森停車場（後の大森駅）の開業により、外国人が多く居住する国際色豊かな街へと変貌を遂げました。エドワード・S・モースによる貝塚発見（隣接する品川区大井説も有力）を記念した大森貝墟碑も現存します。大森八景園の開業や、大森ホテル、望翠楼ホテルといった高級ホテルの開業により、別荘地としても発展しました。関東大震災後も、安全で利便性の高い住宅地として人気を集め、多くの文化人や実業家、政治家が居住しました。ドイツ学園（1991年閉校）が横浜から移転した歴史もあり、現在もジャーマン通りの名称としてその名残りをとどめています。

日本帝国小銃射的協会が明治22年に本郷から移転し、大規模な射的場が建設されました。その後、テニスコートが設置され、「大森庭球クラブ」（後に大森テニスクラブ）が誕生しました。射的場は後に鶴見に移転しましたが、テニスコートは現在も残っています。昭和初期には、多くの文人が集まり、馬込文士村の一角を形成しました。

著名な居住者

山王には、芦田均、井上馨、尾崎士郎、清浦奎吾、山本有三といった、日本を代表する政治家や文化人が数多く居住していました。これらの著名人たちが暮らした歴史は、山王の文化的な深みを示す重要な要素となっています。

現在と未来

かつての豪壮な邸宅は、相続などを経て分割され、往時の面影を残す建物は減少していますが、山王小学校、山王保育園、大森テニスクラブといった施設や、山王小路飲食店街、そして多くの公園などが、人々の生活を支えています。大森駅西口再開発計画は、歴史と文化を継承しつつ、より魅力的で住みやすい街へと変貌させる可能性を秘めています。

主要施設

山王には、大田区立山王小学校、大田区立山王保育園、大森テニスクラブ、山王草堂記念館、尾崎士郎記念館、大森貝墟碑、大森郵便局、中島記念会大森山王病院など、多くの公共施設や商業施設が存在します。また、神社仏閣も多く、地域住民の信仰の場となっています。

山王は、歴史と文化、そして現代の活気が調和した、魅力あふれる地域です。今後の発展にも注目が集まります。

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