山王信仰

山王信仰とは

山王信仰は、滋賀県大津市に位置する日吉大社から派生した神道の信仰体系です。この信仰は、比叡山の神を崇拝するものであり、特に大山咋神や大物主神を中心に据えています。日本全国で約3,800もの神社がこの信仰に基づいており、日吉神社や日枝神社、そして山王神社といった名前の社名で知られています。神仏習合の時代には、「山王権現」とも呼ばれ、今日でも「山王さん」と親しまれています。

起源と歴史

日吉大社は元々、比叡山の神である大山咋神を祀るために創建されました。668年、天智天皇による近江京の遷都の際に、大物主神（大三輪神）を祀ることが決まり、これが後の山王信仰の基盤となります。比叡山にある天台宗の延暦寺が建立されてからは、この二神がその土地の守護神とされ、特に最澄は比叡山を霊的な場として強化しました。彼はこの神々を「山王」と称し、仏教的な視点から信仰の内容を深化させました。

両所三聖と地主三聖

825年には、天台宗の第2代座主である円澄が延暦寺の西塔を設立し、ここでは小比叡神が祀られるようになりました。これに対し、東塔においては大比叡神が信仰され、「両所三聖」という信仰体系が確立しました。その後、良源によって横川が独立した地区として認められると、聖真子が地主神として加わり、地主三聖が成立しました。

しかし、円珍は自身の寺である山王院に山王明神を祀ることから、独自の信仰が生まれ、その結果として「山王三聖」の概念が広がっていきました。後に、この信仰は「山王三聖」として知られるようになり、比叡山全体を象徴する存在となりました。

信仰の展開

山王信仰は天台宗の普及と共に広まり、全国各地に日吉社が勧請・創建されました。これにより、地方名にも日吉や日枝といった言葉が使われるようになり、信仰の浸透を示しています。信仰の本地仏は、山王三聖をそれぞれ釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来として設定したのもこの時期です。

中世の状況と山王神道

中世に入ると、比叡山の僧兵が神輿を担いで強訴を行い、信仰が一層広がりました。しかし、1571年には織田信長による比叡山の焼き討ちがあり、日吉大社も破壊されました。その後、現存する建物は安土桃山時代以降に再建されたものです。

山王祭と江戸

江戸時代には、山王祭が開催され、多くの信者を魅了しました。この祭りは、徳川家康が江戸城の鎮守として日吉社を移設したことから始まります。江戸の日吉社は、神仏分離の影響を受けるまで仏教的な要素が強く含まれていました。

まとめ

山王信仰は、信仰の内容や様式が時代と共に変化しながらも、多くの人々に支持され続けています。信仰を基盤とした地域の文化や行事の意義は、現在も多くの人に受け継がれ、地域社会に根付いた重要な要素であり続けています。

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