地主神

地主神について

地主神（じぬしのかみ、ぢぬしのかみ）は、日本の宗教、特に神道において、特定の土地を守護するとされる神々のことです。「とこぬしのかみ」「じぬしがみ（ぢぬしがみ）」「じしゅのかみ（ぢしゅのかみ）」とも呼ばれます。

概要

神道では、土地にはそれぞれを守護する地主神が存在すると考えられています。土地は神の現れであり、いかなる土地にも地主神が宿るとも言われます。これらの神々は、神社や寺院で祀られることが多く、その場合、その神社や寺院が建つ地域の地主神として崇められています。

地主神の概念は古くから存在し、『古語拾遺』（9世紀成立）には、大地主神（おおとこぬしのかみ）が田を営むという記述が見られます。『延喜式』（10世紀成立）にも、斎宮祈年祭に関する記述や、地主神に関する記述があります。

地主神への信仰は多岐にわたり、荒神、田の神、客人神、屋敷神といった様々な性格を併せ持つ場合があります。また、一族の祖先が地主神として祀られることもあります。地主神は、旧家から分家する際に分祀されたり、新しい屋敷を建てる際に新たに祀られたりすることがあります。御神体も多様で、自然石、石塔、祠、新しい藁束、御幣などが用いられます。祀られる場所も神社や寺院に限らず、丘や林の祠、屋敷、屋敷の裏山など様々です。地域によっては、一族の墓が神格化して祀られることもあります。

地主神の例

新しい土地を開発する際には、その土地の古来の神に許可を得たり、その神を鎮めるために地主神が祀られました。中世には、神社や寺院を建立する際に、その土地の古来の神を地主神としたり、鎮守社を新設して地主神とすることが行われました。

主な地主神

大国主神（おおくにぬしのかみ）: 葦原の中つ国の大地主神とされています。
興玉神（おきたまのかみ）: 五十鈴川領域の地主神で、五十鈴の大宮處や土ノ宮の外宮の地主神とされています。猿田彦命と同一視されることもあります。
猿田彦命（サルタヒコノカミ）: 国土保全と豊穣に関わる神であり、大土御祖神とも呼ばれます。地主の神の総名とされ、各地で祀られています。
大織冠聖霊（藤原鎌足の霊）: 奈良県の多武峯の地主神で、談山神社で祀られています。
日吉神: 比叡山の地主神です。
松浦山城守の霊: 地域豪族で、愛媛県の宇和島市津島町にある地主大明神で祀られています。
坂上田村麻呂: 清水寺の建立に関わったことから、清水寺の鎮守社である地主神社に祀られています。
穴守大神: 羽田浦（現在の羽田空港）開墾の際に、堤防上に祀られた稲荷大神が起源です。

地主神を祀る神社、寺院

多くの神社や寺院で、様々な地主神が祀られています。例として、以下のような場所があります。

榎本神社
小菅神社 (飯山市)
金峯神社 (吉野町)
高原熊野神社
戸隠神社
飛行神社
大泉寺 (高島市)
法明寺 (豊島区)
明王院境内
大處神社 - 大地主神を祀る
* 和田神社 (神戸市) - 摂末社の宮比社で大地主神を祀る

その他

『古語拾遺』には、田を作る日に牛肉を田人に食べさせたという記述があり、肉食を否定していないことが分かります。これは、田作りに動物を利用することを示唆しており、合鴨農法との共通点が見られます。また、牛の渡来は古墳時代以降とされています。

地主神は、日本の文化や信仰において、重要な役割を果たしてきた神々です。その多様な側面を理解することで、日本の宗教観や歴史に対する理解を深めることができるでしょう。

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