山田勝三

山田勝三（やまだ かつぞう）は、昭和後期から平成にかけて活動した日本の実業家です。1944年9月13日、福井県に生まれ、山田商事株式会社の創業者として事業を興しました。彼は特に、その広大な不動産所有に由来する「福井の不動産王」という異名で広く知られるようになりました。福井実業高等学校（現在の福井工業大学附属福井高等学校）を卒業後、実業界で独自の地位を築き上げた人物です。

山田氏は福井市を拠点とし、その突出した資産家としての生活ぶりは、しばしばメディアの関心を集めました。テレビ番組、中でもTBS系列で放送されていた「アッコにおまかせ!」などに出演し、その個性的な人柄や言動で多くの視聴者に強い印象を与えています。彼の富豪ぶりを示す具体的なエピソードとして有名なのは、髙島屋で販売された一点ものの高額商品、価格577万円の「ハローキティペンダント」を、提示された金額をその場で現金で支払い、即金で購入したという話です。これは、彼がいかに経済的に余裕があり、またその購買行動が常識を超えたものであったかを示す好例と言えるでしょう。

また、山田氏はプロ野球、特に読売ジャイアンツの往年の名選手、長嶋茂雄の熱烈なファンとしても知られていました。この長嶋への深い敬愛は、彼のライフスタイルにも色濃く反映されていました。福井市内に所有していた邸宅は、敷地面積が約830坪に及び、当時の時価で20億円とも評価される広大な豪邸でした。この自宅の敷地内には、彼が心から尊敬する長嶋茂雄の姿をかたどった等身大の銅像が建てられていたのです。この邸宅の周辺を見ても、多数の駐車場が整備されており、山田氏が文字通りの大地主であったことがうかがえます。

さらに、山田氏は自身の邸宅の一部を改装し、「スポーツ・ミュージアム山田コレクション」として一般に開放したことがあります。これは2007年4月に開館しましたが、残念ながら2013年には閉館しています。ここには、スポーツ関連の貴重なコレクションが展示されていたと推測されますが、詳細な展示内容は広く知られていません。

実業家としての手腕や資産に関する発言の中には、真偽が議論されたものもあります。特に彼は生前、「株式公開直後のセブンイレブンに対し1億円もの資金を投資した」「セブンイレブンの個人株主としては自分が筆頭である」といった話を公言していました。しかし、セブンイレブン（現在はセブン＆アイ・ホールディングスの一部）が株式を公開して以降、半期ごとに公表される大株主上位10名のリストに、山田勝三の名前が記載されたことは一度もなかったのです。実際には、現在まで一貫してイトーヨーカ堂やセブンイレブン・ジャパンの創業者である伊藤雅俊氏が最大の個人株主であり続けています。このため、山田氏によるセブンイレブン株に関する発言は、事実とは異なる誇張であった可能性が高いと考えられています。

家族関係としては、彼の兄の孫、すなわち大甥に、プロ野球選手として活躍する山田修義（オリックス・バファローズなどに所属）がいます。これは、山田氏の個人的なつながりを示す一例です。

また、山田氏は公の場においてカツラを着用していたことでも知られていました。これは彼の外見上の特徴の一つとして、周囲の人々に認識されていた点です。

山田勝三は、2013年8月28日、肺炎の治療のために入院していたあわら市内の病院にて、午後2時頃にその生涯を終えました。享年68歳でした。

「福井の不動産王」として、豪快なエピソードやメディアでの露出、そして特定の趣味への熱意など、多角的な側面を持っていた山田勝三。彼の存在は、地方経済における一成功者の姿であると同時に、一般的な枠に収まらないユニークな人物として、多くの人々の記憶に刻まれています。その人生は、富と個性、そしてある種のミステリーが入り混じったものであったと言えるでしょう。

もう一度検索