山田輪盛館

山田輪盛館の歴史

山田輪盛館（やまだりんせいかん）は、1909年から1968年まで営業を続けたオートバイと輸入自動車の販売店です。その歴史は、1886年に生まれた山田光重によって始まりました。彼は、23歳という若さで、文京区本郷三組町に自転車の販売および修理を専門とする会社を設立しました。

初期の頃から、山田輪盛館はオートバイの取り扱いに注力しており、特にNSU（ドイツ）、LMC・トライアンフ（英国）などを輸入し積極的に販売していました。工場には、旋盤技術に秀でた長沢基一や、板金の達人である田中八五郎が在籍し、質の高いアフターサービスを提供したことで顧客からの信頼を得て、業績を伸ばすことができました。

1910年には神田多町に移転し、時計やラジオ、輸入雑貨なども取り扱うようになりました。この拡張によって、オートバイの販売がさらなる発展を遂げ、国産のサンライズ号をはじめとして、BSA（英国）、ハーレーダビッドソン（米国）など、多様な車種を取り扱うようになり、会社の成長を支えました。

しかし、戦争の影響も受け、長男である武雄が戦死するという悲劇が訪れます。失意の中で山田光重は1949年に他界しましたが、彼の女婿である大関日出吉がその後を引き継ぎました。大関は山田輪盛館での輸入オートバイの取扱いと並行して、新宿区東大久保に株式会社山輪を設立。こちらでは「HORSE」ブランドのオートバイ部品の製造を始めました。

この部品を用いて製造されたオートレース用のマシンは、高いパフォーマンスを発揮し、業界で注目を集めました。さらに、この取り組みは2013年に日本高速機関株式会社が設立され、HOSK（ホスク）号という完成車の製造をきっかけに、製品の多様性を広げていきました。HOSKという名は、開発に関与したメンバーのイニシャルを組み合わせたものであり、スポーツモデルとしても注目されていました。

1959年にはホスク号の製造権が沼津市の昌和製作所に譲渡され、会社は輸入販売業務に専念するようになりました。この時期、アリエル（英国）やツェンダップ（ドイツ）など、さまざまなモーターサイクルの輸入を行い、高性能車の魅力を提供。さらに、イタリアのアバルトやランチア、フランスのファセル・ヴェガ、ドイツのグラースなど、マニアックな高性能車の輸入にも乗り出しました。

しかし、需要と供給のバランスが崩れ、特に国産車の進歩が急速に進む中で、輸入車の市場は狭まる一方でした。この結果、山田輪盛館の業績は次第に下降し、1968年に大関社長が亡くなると共に、長い歴史を閉じることとなりました。山田輪盛館の名前は、時代の流れの中で消えてしまったものの、彼らが築いた業界への影響は今も生き続けています。

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