山田郡 (尾張国)

山田郡の歴史と概要

山田郡（やまだのこおり）は、かつて尾張国東部に存在した地区で、戦国時代に廃止され、その地域は春日井郡と愛知郡に分割されました。しかしその正確な境界や廃止時期については多くの不明点が残されています。

郡の領域

元の山田郡には以下の地域が含まれていたと推測されています。

• - 名古屋市の一部（守山区・名東区を含む）
• - 瀬戸市全域
• - 尾張旭市全域
• - 長久手市全域
• - 日進市全域
• - 東郷町の一部
• - 春日井市の一部

しかし、これらの地域の詳しい境界設定には未解決の問題が多く残されており、特に愛知郡との境界については様々な説が存在します。

郡名の由来

山田郡の名前の由来は明確ではありません。一般的には、丘陵地帯を縫うように流れる河川や氾濫原の地形が関係しているとされています。また、安閑天皇の皇后である春日山田皇女に由来する説も存在します。安閑天皇は、彼女に捧げた屯倉の一つとして尾張に御名代部を設置したとされ、このことが郡名に影響を与えたと言われています。

古代の歴史

山田郡は、7世紀後半に設けられた山田評を前身とします。『日本書紀』に記されているように676年に大嘗祭の悠紀として指定されていますが、この当時は実際には「山田評」という名称が用いられていました。701年には大宝律令に基づいて山田郡が成立しました。

古代の山田郡では「山田荘」という荘園が存在し、752年に設立され909年に立券されました。この荘園は現在の守山区や名東区などに当たる地域に広がっていたと考えられています。古代から山田地区では窯業が盛んで、期間中に多くの須恵器や埴輪が製造されました。特に名古屋市千種区や尾張旭市の古窯群周辺では、このような品々が多く発見されています。

平安時代からの変遷

平安中期には『和名類聚抄』に山田郡内の郷名が記載されています。その中には「船木」、「主恵」、「石作」、「志談」、「山口」などがあり、それぞれの郷の位置や由来について議論が続いています。中でも「山田」と名の付く郷は、山田郡の中心として重要な位置を占めていたと考えられています。

中世の状況

中世には狩津荘や稲生荘などの荘園が存在しており、特に東部の地域（現在の名東区や日進市など）は「八事迫（やごとばさま）」と呼ばれる国衙領となっていました。戦国時代には、山田郡は矢田川を境に分割され、春日井郡や愛知郡に組み込まれることとなりました。

廃止時期

山田郡の名称が史料に現れるのは1548年まで遡りますが、廃止されたのは16世紀初頭とされています。この廃止の理由には、当時力を持っていた織田氏との関連が挙げられる場合もありますが、詳細は不明です。部落が他の郡に編入される過程で地域の名前は消滅し、山田郡はその歴史の中で徐々に陰りを見せることになりました。

このように、山田郡は古代から中世にかけて多くの歴史的変遷を経て消滅しましたが、その名残は今なお地域の地名や史跡に息づいています。

もう一度検索