山科植物資料館

山科植物資料館について

山科植物資料館は、京都市にある薬用植物園で、製薬会社である日本新薬によって運営されています。約2,400坪の敷地内には、3,000種類以上の薬用植物が栽培されており、薬学研究や希少植物の保護に重要な役割を果たしています。一般公開はされておらず、見学を希望する場合は、事前に研修会への応募が必要です。

歴史

山科植物資料館は、1934年（昭和9年）に日本新薬が設立した「山科実験農場」が前身です。当時、日本国内における回虫感染率が高かったことから、同社は回虫駆除薬であるサントニンの国産化を目指していました。

サントニンの原料となるシナヨモギは、当時ソビエト連邦からの輸入に頼っていましたが、第一次世界大戦の影響で輸入が困難になったため、代替となる植物の探索が始まりました。

1927年、南ヨーロッパ原産のヨモギの一種からサントニンの結晶化に成功し、この植物は「ミブヨモギ」と名付けられました。しかし、ミブヨモギは日本の高温多湿な気候に弱く、品質にもばらつきがあったため、栽培方法の確立と品種改良が必要となりました。

そこで、1934年に山科実験農場が開設され、ミブヨモギの栽培試験が開始されました。その後、1937年にはより多くのサントニンを抽出できる「山科二号」の開発に成功、1940年には国産初のサントニンが発売されました。

1953年には、ミブヨモギの研究に加え、新たな薬用植物の研究開発を行うため、「山科薬用植物研究所」へと改組されました。さらに、1994年に現在の「山科植物資料館」へと名称変更されました。

コレクション

山科植物資料館では、ミブヨモギをはじめとする多種多様な薬用植物が栽培されています。環境省が指定する絶滅危惧種や、キソウテンガイなど、世界的に希少な植物も展示されており、その保護にも貢献しています。

施設

資料館内には、以下の施設があります。

大温室: 様々な植物が栽培されています。
ミブヨモギ記念館: ミブヨモギに関する展示を行っています。
見本園: 様々な植物の見本を展示しています。
シダ園: シダ植物を栽培しています。
ビオトープ: 自然に近い環境を再現した池などがあります。
ロックガーデン: 岩石と植物を組み合わせた庭園です。
セミナールーム: 研究会や研修会などに利用されます。

活動状況

山科植物資料館では、植物園業務のほか、希少植物の調査研究にも力を入れています。また、植物の学名普及の功績により、2017年度には日本[[植物園協会]]よりアボック・カルタ賞を受賞しています。

アクセス

山科植物資料館は一般公開されていません。見学を希望する場合は、事前に見学研修会に応募する必要があります。

JR琵琶湖線・京都市営地下鉄東西線 山科駅からタクシーで約10分
京都市営地下鉄東西線 椥辻駅2番出口から徒歩7分

参考情報

参考文献: 山浦高夫「山科植物資料館の歴史とその取組み-製薬企業の薬用植物園の一例-」『薬学雑誌』第131巻第3号、日本薬学会、2011年、395-400頁
* 外部リンク: 公式ウェブサイト / Jardins Botaniques Japonais (フランス語)

山科植物資料館は、薬用植物の保全と研究に貢献する貴重な施設であり、その歴史と活動は、薬学研究だけでなく、植物学の発展にも重要な役割を果たしています。

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