山縣農場

山縣農場について

山縣農場（やまがたのうじょう）は、明治時代に栃木県伊佐野（現在の矢板市伊佐野）で開かれた開拓農場です。開設者は、明治維新の功績者であり、第4代内閣総理大臣を務めた山縣有朋です。この農場は、那須野が原とその周辺に設立された多くの華族農場の中で重要な位置を占めています。

開設の背景

山縣有朋は、1869年から1870年にかけて欧米を視察し、そこで見た貴族が田園で農業を営む姿に感銘を受けました。日本でも政府が西洋の農業経済を導入することを進めたため、彼は那須野が原の開発に参加することを希望しましたが、大部分の平坦な土地は他の高官に占有されていました。そこで、彼は地元である伊佐野の地を選び、許可を得て1886年に『伊佐野農場』として開設することができました。

農場の特徴

この農場の面積は約750町歩にも及び、その大部分は山林でした。山縣は、開墾にあたる人員の募集を行う際に、土地のない農家の次男や三男を対象とし、農業振興による国の発展を目指しました。条件を満たす小作人には土地を提供し、定住を促進する方針を採りました。さらに、入植者の生活環境を整えるために住居を提供し、彼らの子弟のために学校を設立するなど、労力を惜しまなかったのです。

開墾と自作農の育成

1891年には、初めて小作地の払い下げが行われ、1892年には当時の農場管理者が描いた「伊佐野農場圖稿」が作成されるなど、開墾は徐々に進行しました。1910年には、有朋の詩の中に農場の発展を歌ったものも見られ、その成果を実感していたことがうかがえます。また、有朋の死後も自作農育成の方針は引き継がれ、1934年には48名の小作人に土地が分譲され、自作農としての道が拓かれました。

戦後の影響と現在

第二次世界大戦後の農地改革において、多くの華族農場が影響を受けた中、山縣農場は事前に小作人に土地を譲渡していたため、大きな影響を被りませんでした。年代が進むにつれ、山縣農場は地域農業の振興を図りながらも、独自の経営スタイルを維持していきました。

山縣有朋記念館の設立

現在、山縣農場内には山縣有朋記念館があり、有朋の遺品や資料が展示されています。この記念館は1999年に開館し、重要文化財に指定されている建物には、大震災で破壊された古稀庵が移築されています。美術品や歴史的文書など、貴重な資料が数多く収蔵されています。

農場の交通アクセス

かつては、山縣農場へのアクセス路線も確立されていましたが、時代の変遷とともに廃止されてしまいました。しかし、栃木県矢板市に位置するこの農場は、歴史的な価値を持つ場所として多くの人々に愛されています。今もなお、その歴史と文化が受け継がれ、地域の人々に親しまれています。

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