小作人

小作人とは

小作人とは、田畑などの農業生産資本を所有する地主に対し、土地を持たない農民がその土地を借りて耕作する身分を指します。小作人は、生産物の中から地代を地主に納める必要がありました。その隷属性は時代や地域によって異なり、農奴や奴隷に近い状態から、比較的自由な立場の小作人も存在しました。

歴史

安土桃山時代まで

古代の荘園制度下では、土地は領主の所有であり、耕作人は奴婢と呼ばれました。しかし、天皇朝廷の支配が崩壊すると、惣村などが成立し、耕作実態に基づき農地は領主の所有ではないという認識が広まりました。領主は年貢を徴収する権利、在地領主は加地子を収得する権利を持つようになり、農地の所有者は農家（自作農）と見なされるようになりました。

江戸時代

1643年、江戸幕府は田畑永代売買禁止令を公布し、農家間の田畑の売買を禁じました。これは、富農による土地の集中を防ぎ、農村の崩壊を食い止めるためでしたが、抜け道も存在し、実際には地主による田畑の兼併は行われていました。多くの村では、大地主の田畑を耕作する多数の小作人が存在しました。

身分固定社会の下で、困窮する農家が増大し、多くの中下層農家が資産を失い、没落していきました。田畑永代売買禁止令は、田畑の質入れを禁止しておらず、また元禄期には質流れが実質的に認められたことで、田畑の売買が行われるようになり、有名無実化しました。

戦前

明治維新後の地租改正と田畑永代売買禁止令の廃止により、地主による土地の兼併がさらに進行しました。地租改正により、土地所有者は金銭で税金を納める義務を負うことになり、貧しい農民は土地を失い、小作人に転落していきました。

地主は質屋などの金融業を兼業することが多く、小作人への貸付を通じて、農村内の貧富の差は拡大しました。一部の地主は、収奪した富を商工業に投資し、近代的な資本家へと転換しました。

小作料などをめぐり、小作人と地主の間では小作争議が頻発しました。第一次世界大戦後の経済恐慌をきっかけに争議は激増しましたが、戦時体制下で衰退しました。1924年には小作調停法が公布され、裁判所が調停を行う制度が設けられました。

戦後

第二次世界大戦後、GHQ（連合国軍最高司令官総司令部）は、地主と小作人の身分体制が日本の軍国主義に加担したとして、農地改革を行いました。この改革により、地主が所有していた農地は安価で買い上げられ、小作人に安価で売り渡されました。この改革は、日本の農業構造を大きく変えることになりました。

ただし、山林などは改革の対象外であり、林業経営においては資本力のある地主が企業的な経営を行うことが一般的でした。しかし、1970年代以降の輸入材の増加に伴う木材価格の暴落により、日本の林業は衰退しました。

沖縄県および鹿児島県奄美群島などは、戦後アメリカの施政権下にあったため、農地改革は行われませんでした。

小作制度は、日本の歴史の中で重要な役割を果たしました。農地改革によってその姿は大きく変わりましたが、その影響は現代にも残っています。

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