那須野が原

那須野が原：扇状地の地形と開拓の歴史

那須野が原は、栃木県北部の那須地域に位置する広大な複合扇状地です。那須連山と大佐飛山地の山麓から、箒川と那珂川の合流地点にかけて、標高150mから500mの緩やかな傾斜を持つ台地が広がっています。この地域は「那須野ヶ原台地」とも呼ばれ、日本三大疏水の一つである那須疏水が流れています。

地理的特徴

那須野が原は、北を那珂川、南を箒川によって区切られています。扇状地特有の地形として、普段は水が流れない熊川や蛇尾川が中央を流れています。その形状は木の葉に似ており、蛇尾川の流入口を木の葉の枝と見立てると、木の葉の先端は箒川と那珂川が合流する大田原市の佐良土に当たります。この距離は約30km、木の葉の幅に相当する部分は、国道4号線が通る大田原市野崎の箒川から那須塩原市那珂川晩翠橋まで約20kmに及びます。その広さは約4万ヘクタール（400平方キロメートル）と、日本最大級の扇状地と言えるでしょう。

広義には、那珂川以北の那須高原を含む、箒川から福島県境までの7万ヘクタールの平地を指すこともあります。歌枕としては、「那須の篠原」としても知られています。

地質

扇状地である那須野が原の地質は、地表から30cmから50cm下は砂礫層となっており、地面を少し掘るだけで大量の石が出てきます。そのため、河川は砂礫層に水が浸透してしまい、大雨の時以外は地表を流れません。

開拓の歴史

那須野が原は、元々水資源に乏しく、農業には適さない地域でした。現大田原市以西の那須連峰山麓部は、河川が伏流しやすく、井戸を掘っても水を湧出させるまでに数十メートルから100メートル以上の掘削が必要でした。北側の那珂川は水量が豊富ですが深い谷底を流れ、南側の箒川も扇状地の最も低い場所を流れているため、田畑への水の供給が困難でした。蟇沼用水や木ノ俣用水のような小規模な用水路は存在しましたが、那須野が原に広範囲に堆積した砂礫層は保水力が弱く、水田や用水路から水が地中に浸透してしまいました。また、地面を耕すと大量の石が出るため、農作業には特別な鍬が必要でした。

江戸時代末期まで、那須野が原にはほとんど集落が存在しませんでしたが、明治政府の殖産興業政策により、1885年（明治18年）に日本三大疏水の一つである那須疏水が開削され、那珂川の上流域から水が導水されると、用水の確保に目処が立ち、開拓が大きく進展しました。その後も、除礫や土壌改良、井戸掘削技術の向上、揚水ポンプの普及などの努力が重ねられ、那須野が原の広大な荒地は灌漑され、緑豊かな農業生産地、酪農地へと生まれ変わりました。現在では、酪農と米の生産高で県内一を誇っています。

那須野が原の開拓は、人々の努力と知恵によって不毛の地が豊かな土地へと変貌した、日本の近代化を象徴する出来事と言えるでしょう。

ギャラリー

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脚注

栃木県ホームページ1
栃木県ホームページ2
那須野が原マップ

関連項目

那須
那須高原
松方正義 - 明治期に開拓に着手した

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