山羊座のもとに

『山羊座のもとに』

『山羊座のもとに』（やぎざのもとに、原題：Under Capricorn）は、1949年にイギリスとアメリカの合作として公開された映画です。この作品は、ホラーやスリラーで知られるアルフレッド・ヒッチコックが監督を務め、名女優イングリッド・バーグマンや俳優ジョゼフ・コットンが出演しています。また、この映画はテクニカラーで撮影され、美しい映像が特徴的です。

概要

物語は19世紀のオーストラリア・シドニーを舞台に、複雑な三角関係を描いています。原題は、南半球を分ける南回帰線に由来しており、その影響も含めて作品全体のテーマに「肉欲」が表現されています。興行的には困難を極め、当初は観客の期待に応えられなかったことや、バーグマンのスキャンダルが影響したものの、後に再評価されています。実際、誰もが認める名作の一つに数えられるようになりました。

初公開後、映画がヒッチコックの期待を大きく下回る結果となり彼自身「失敗作」と述べたことからも、当時の舌足らずな評価が伺えます。しかし、もし物語を深く探求すれば、スリラー成分なくとも視覚的な美しさやキャラクターの感情の複雑さが豊かであることに気付くことでしょう。日本では公開されなかったものの、後にビデオが発売され、現在はDVDとしてパブリックドメインでも入手可能です。2017年から2020年にかけては、東京のシネマヴェーラ渋谷で特集上映も行われました。

あらすじ

物語は、イギリス総督の甥チャールズが流刑地として知られるオーストラリアのシドニーにやって来るところから始まります。彼は一攫千金を狙っていたが、有力者フラスキーの妻であるヘンリエッタと出会ったことで、やがて彼の人生は大きく変わっていきます。チャールズ、フラスキー、ヘンリエッタの間には緊張と欲望が渦巻き、彼らの複雑な関係が物語の重要な進行を担います。

キャストとスタッフ

主なキャストには、イングリッド・バーグマン、ジョゼフ・コットンが含まれています。この作品を通じて、ヒッチコックはバーグマンに特異な演技の指導を行い、時には意見が衝突することもありました。バーグマンは自らの演技についての不満を語り、ヒッチコックはその状況を「たかが映画じゃないか」と軽視したとされています。こうしたスタッフ間の摩擦も本作の魅力の一部と言えるでしょう。

製作背景

『山羊座のもとに』は、ヒッチコックが『パラダイン夫人の恋』を手がけた後に独立して制作した初の映画となり、彼自身が原作の叙情性に惹かれたことから製作が決まったとされています。しかし、プロジェクトが進むにつれて、ヒッチコックの期待やのぞみ、またバーグマンの演技への反応の違いが浮き彫りとなり、作品が進行する様子は緊迫感を生んでいます。

ある意味では、この映画はヒッチコックにとっての反省材料でもあったといえるでしょう。興行の失敗を受けて彼は、「ハリウッドナンバー1を手に入れて思い上がってしまった」と自己反省を述べています。とはいえ、時間が経つにつれて、この映画は一部のファンの間で熱狂的に受け入れられるカルト作品として位置づけられるようになりました。これらの要素を享受できることこそが、『山羊座のもとに』の楽しみの一つです。

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