ジョゼフ・コットン

ジョセフ・チェシャー・コットン：ハリウッド黄金期の巨匠とイタリア映画界での活躍

ジョセフ・チェシャー・コットン（1905年5月15日 - 1994年2月6日）は、アメリカ合衆国の俳優です。しばしば「ジョセフ・コットン」と表記され、ヨーロッパの作品ではスペル違いのクレジット名も用いられました。ヴァージニア州出身で、女優のパトリシア・メディナと結婚していました。

華麗なるキャリアの幕開け：ブロードウェイからハリウッドへ

ヴァージニア州の学校で演劇を学んだコットンは、演劇関係のジャーナリストとして活動した後、俳優の道を目指してニューヨークへ移住。1930年にブロードウェイでデビューを果たします。その後、オーソン・ウェルズと出会い、1937年からウェルズの劇団に参加。1941年、ウェルズ監督作品『市民ケーン』で映画デビューを飾り、銀幕でのキャリアをスタートさせました。

『市民ケーン』での印象的な演技は、コットンの名を一躍有名にしました。その後も、キャロル・リード監督の『第三の男』（1949年）など、後世に残る名作に数多く出演し、1950年代までは主演俳優として活躍。1948年には『ジェニイの肖像』でヴェネツィア国際映画祭 男優賞を受賞するなど、その演技力は高く評価されました。

時代の流れとイタリア映画界への進出

1960年代に入ると、コットンは徐々に脇役へと転じ、テレビ映画やテレビシリーズへの出演が増加。しかし、米国映画界では渋い演技で存在感を放つベテラン俳優として重宝されました。

1940～50年代にトップスターとして活躍したコットンも、時代の流れには抗えず、ガイ・マディスンなどの西部劇スターがイタリア映画界に活躍の場を求める流れに追随。オーソン・ウェルズも欧州各地で活動する中、コットンはマカロニ・ウエスタンにも出演するようになりました。

マカロニ・ウエスタンでの活躍と多様な役柄

1965年にはマカロニ・ウエスタン『荒野の渡り者』で主演。共演には、ターザン俳優のゴードン・スコットやジェームズ・ミッチャムらが名を連ね、若手俳優だったフランコ・ネロも出演していました。1967年には『黄金の棺』で主演を務め、両作品において誇り高き南部人を演じました。

スペインでのマカロニ・ウエスタン撮影にも参加し、ウィリアム・シャトナー主演の『ホワイト・コマンチ』（1968年）にも出演。その後も『顔役』（1969年）、マリオ・バーヴァ監督の『処刑男爵』（1972年）、ルッジェロ・デオダート監督の『コンコルド』（1979年）、セルジオ・マルティーノ監督の『ドクター・モリスの島』（1979年）、メキシコ映画『ガイアナ人民寺院の悲劇』（1979年）など、多様なジャンルの作品に出演しました。

一方、米国映画界でも脇役として活躍を続け、『緯度0大作戦』（1969年）、『トラ・トラ・トラ！』（1970年）、『ソイレント・グリーン』（1973年）、『天国の門』（1980年）といった大作にも出演しています。

物静かなジェントルマン：日本のスタッフとの交流

『緯度0大作戦』の撮影では、日本人スタッフとの交流が少なかったため、一部から反発を受けたというエピソードも残されています。しかし、共演した宝田明は、コットンを「物静かなジェントルマン」と評し、米国の撮影システムと日本の違いを理解していた大人だったと高く評価しています。

晩年と死去

1981年、脳卒中により発声が困難となり、俳優活動を引退。1994年2月6日、肺炎のためロサンゼルスの自宅で88歳で死去しました。当時のテレビ朝日の『ニュースステーション』では、久米宏が『第三の男』での名演を偲んでいました。

ジョセフ・チェシャー・コットンは、ハリウッド黄金期を代表する俳優として、そしてイタリア映画界にも足跡を残した個性的な俳優として、映画史にその名を残しています。彼の多様な役柄と卓越した演技は、多くの観客の心に深く刻まれています。

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