山芋 (詩集)

『山芋』

『山芋』は、教育者である寒川道夫が、1932年から勤務していた新潟県古志郡黒条小学校の担任クラスで作成していた学級文集『青い空』に掲載された詩をまとめたものです。この詩は、寒川の教え子である大関松三郎によって書かれました。

概要

この詩が書かれたのは戦前ですが、詩集として刊行されたのは1951年になってからです。生活綴方運動などに大きな影響を与えたのは、主に戦後になってからのことでした。しかし、大関松三郎は太平洋戦争で戦死しており、詩集の刊行を待たずしてこの世を去っています。

詩の内容は、非常に素直で率直な観察眼に基づいています。そのため、教師である寒川が手を加えたのではないか、あるいは共同制作なのではないか、といった批判も寄せられました。大関松三郎が中学校時代に書いた日記の一部の文章も公表されており、その文体が詩の文体と異なるとの指摘もあります。しかし、詩と日記の文体が異なるのは当然のことと考えられ、この批判は根拠に乏しいとも言えます。

『山芋』がもたらした影響

『山芋』は、戦後の教育運動、特に生活綴方運動に大きな影響を与えました。子どもの視点から捉えた日常や感情を率直に表現するスタイルは、当時の教育界に新鮮な衝撃を与え、多くの教師や子どもたちに影響を与えました。大関松三郎の純粋な感性と表現力は、子どもたちの可能性を信じる教育の重要性を改めて示すものとなりました。

議論と批判

詩集『山芋』には、その素朴な表現ゆえに様々な議論が巻き起こりました。教師の指導による創作ではないか、合作ではないかという批判は、作品の純粋性を疑うものでした。しかし、大関松三郎の日記との文体比較は、詩と日記という異なる文体の差異を考慮する必要があり、批判の根拠としては薄弱であるという意見もあります。

関連事項

綴方教室: 子どもの生活や感情を文章で表現する教育方法。戦後の教育運動に大きな影響を与えた。

参考文献

寒川道夫『大関松三郎詩集 山芋』講談社文庫、2000年。ISBN 978-4-06-138094-3
木下浩『「山芋」考　その虚構と真実』創童社、1993年。
南雲道雄『大関松三郎の四季　「山芋」の少年詩人』社会思想社、1994年。
太郎良信『「山芋」の真実　寒川道夫の教育実践を再検討する』教育史料出版会、1996年。
野地潤家編『戦後作文教育解題』渓水社、1999年。

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