山道康子

山道 康子

山道康子（やまみち やすこ）氏は、1946年2月20日、北海道沙流郡平取町二風谷に生まれたアイヌ活動家です。アイヌ名は「アシリ レラ」といい、これは「新しい風」を意味します。その名の通り、彼女は現代社会においてアイヌ民族の文化継承と権利回復を目指し、多様な活動を通じて新たな息吹をもたらしてきました。

若い頃からアイヌ女性としての自覚を持ち、1961年頃には既に活動を開始していたとされています。故郷である二風谷でアイヌ民芸店を営み、伝統工芸品の販売を通じてアイヌ文化を伝え、地域経済の一端を担いました。この経験は、彼女のその後の活動の基盤となったと考えられます。

山道氏の活動は、故郷の自然環境を守る運動にも深く関わっています。1979年には、二風谷ダム建設問題を背景に、故郷を流れる沙流川の環境保護とアイヌ民族の権利擁護を目的とした市民団体「沙流川を守る会」の設立に、中心的な役割を果たしました。この運動は、国の公共事業と先住民族の文化・生活権との間で生じた軋轢を象徴する出来事であり、彼女はアイヌ民族の立場から粘り強く訴えかけ続けました。

アイヌ文化、特に言語の継承は彼女の活動の重要な柱の一つです。1989年からは、平取町二風谷で「山道アイヌ語学校」を設立・運営しました。この学校は単なる語学教室ではなく、フリースクールとしての機能も持ち合わせ、子どもたちにアイヌ語だけでなく、アイヌの歴史や文化、精神性を伝える場でした。アイヌ語が消滅の危機にある中で、約20年間にわたりこの学校を維持・運営したことは、次世代に文化をつなぐための貴重な取り組みでした。残念ながら、この学校は2009年に閉校しましたが、その間に育まれた学びや交流は、多くの人々に影響を与えました。

また、1989年から毎年開催されている「アイノモシリ一万年祭」においても、山道氏は中心人物の一人として活躍しています。この祭典は、アイヌ民族が大地とともに生きてきた悠久の歴史と文化、そして精神性をたたえ、現代社会に生きるアイヌとしてのアイデンティティを確認する場です。国内外から多くの人々が集まり、伝統儀礼や音楽、踊りなどを通じてアイヌ文化に触れることができるこの祭りは、民族内外の交流を深め、アイヌへの理解を促進する上で重要な役割を果たしています。

山道氏は、これらの活動に加え、日本全国で精力的に講演活動を展開しています。アイヌ民族の歴史、文化、現状、そして過去の抑圧や現在の差別の問題について、自身の経験に基づいた力強い言葉で訴えかけ、多くの人々にアイヌ民族への関心と共感を呼び起こしています。その活動は、アイヌ民族の尊厳回復と権利確立、そして多様な文化が共生する社会の実現に向けた、長年の取り組みとして国内外から高く評価されています。

彼女の人生や活動については、関連書籍として宇井眞紀子氏による『アイヌ、風の肖像』（新泉社、2011年）や、akira氏による『風の子レラ』（青山出版社、2001年）が出版されています。また、アシリ レラ公式サイトやMs Wendyなどの外部リンクを通じて、彼女の活動に関する情報を得ることができます。

山道康子氏、「アシリ レラ」がもたらす「新しい風」は、アイヌ民族の未来を切り拓き、日本社会における先住民族問題への意識を高める上で、極めて大きな影響を与えています。彼女の揺るぎない信念と行動は、多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

もう一度検索