山野辺一記

山野辺 一記（やまのべ かずき）は、脚本家、ゲームシナリオライター、ゲームクリエイター、劇作家として知られる人物。本名は山部 康男（やまべ やすお）である。山口県下関市に生まれ育ち、山口県立豊浦高等学校を卒業後、帝京大学文学部心理学科で学んだ。現在は自身が設立した株式会社エッジワークスの代表取締役を務める傍ら、日本脚本家連盟、日本放送作家協会、日本児童文芸家協会、そして日本ゲームシナリオライター協会（JAGSA）の理事として、業界の発展にも関わっている。

大学を卒業後、アニメーション制作の現場に足を踏み入れ、マッドハウスやぴえろといった著名なスタジオで制作進行の職務にあたった。そこでアニメ制作の一連の流れを学んだ後、アニメーション演出家として活躍する井内秀治氏に師事し、脚本の技術を磨いた。1997年には、自身が脚本を手がけたテレビアニメ『超魔神英雄伝ワタル』の第4話「求む!こわ〜いお化け」で脚本家としての正式なデビューを飾った。以降、数々のアニメ作品で脚本執筆やシリーズ構成といった主要な役割を担うこととなる。

筆名に関しては、テレビアニメ『超ぽじてぃぶ! ファイターズ』の執筆を機に、本名の山部康男から「山野辺一記」へと改名し、現在に至るまでこの名義で活動している。また、多岐にわたる創作活動の中で、「広岡未森」という別のペンネームを使用し、ライトノベルの分野でも作品を発表している。

2003年には、物語制作に特化した自身の会社、株式会社エッジワークスを設立し、その代表取締役に就任した。エッジワークスは、特にゲームシナリオの制作において豊富な実績を持ち、会社名義で数多くのゲーム作品にシナリオを提供している。その活動範囲は、家庭用ゲーム機向けのタイトルから、オンラインゲーム、そしてモバイルコンテンツまで広範に及ぶ。ゲームシナリオの執筆で培った経験は、他のメディアへの展開にも繋がり、コミック原作の分野にも進出。『月刊コミックラッシュ』誌上では、SFアクションシリーズ「クロウズヤード」の連載を行った。

アニメーション制作会社ジーベックとの協業も多く、同社が制作したテレビアニメ『快傑蒸気探偵団』や、ゲーム『機動戦艦ナデシコ The blank of 3 years』などで脚本を手がけている。特に2004年には、ジーベック制作、羽原信義監督のテレビアニメ『蒼穹のファフナー』において、シリーズ構成という重要な役割を任された。しかし、制作過程で物語の方向性に関する調整が必要となり、シリーズ構成の担当は原作者である冲方丁氏へと引き継がれ、山野辺氏はベースプランニング協力として作品を支える形となった。同様に、人気アニメシリーズ『おねがいマイメロディ』でも、シリーズ構成として参加した後、ベースプランニングへと担当が変更されている。

山野辺氏の創作活動は、アニメやゲームの枠に留まらない。自らの原作に基づく舞台「いかもの探偵-IKATAN-」（2008年）の上演や、人気ゲームシリーズを舞台化した「VitaminXtoZ いくぜっ！究極（ハイパー）★エクスプロージョン」（2010年）の脚本執筆など、劇作家としてもその才能を発揮している。さらに、ドラマCD、キャラクターソングのシナリオ、各種メディアミックス作品への寄稿など、シナリオライターとしての多様なスキルを活かして活動領域を広げている。

また、自身の豊富な経験を次世代に伝える活動も熱心に行っている。ゲーム開発者向けの主要なカンファレンスであるCEDECにおいて、ゲームシナリオに関する講演を複数回実施。専門学校やイベントでのシナリオ講座講師も務め、後進の育成に尽力している。

このように、山野辺一記氏は、アニメ脚本家としてキャリアをスタートさせ、ゲームシナリオライター、劇作家、そして企業の代表として、物語を通じてエンターテインメントの世界に多大な貢献を果たしている。その活動は様々なメディアに及び、常に新しい表現の可能性を追求し続けているクリエイターと言えるだろう。

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