岡ビル

岡ビル

岡ビルは、岡山県岡山市北区野田屋町に所在する、地域に根ざした屋内型の小売市場です。その歩みは日本の戦後復興期に始まり、高度経済成長期を経て現代に至るまで、地域の生活と商業活動を支えてきました。

沿革

岡ビルの歴史は、1946年（昭和21年）9月、西川沿いに開設された「岡山マーケット」に始まります。当初は55の店舗が集まる市場として機能していました。翌1947年（昭和22年）には運営会社として株式会社岡ビル商場が設立され、出店数は135に増加するなど規模を拡大します。そして、1951年（昭和26年）10月、現在の建物が竣工し、名称を株式会社岡ビル百貨店と改め、新たな時代を迎えます。

この時期に建てられた施設は、1階に店舗、2階から4階を住宅とする職住一体型の構造を採用しており、当時の商業施設としては非常に先進的な試みでした。その画期性は地元メディアでも紹介され、岡山市内だけでなく郊外の郡部からも多くの人々が訪れるなど、広い範囲から集客する中心的な商業拠点として大いに賑わいました。

市場の安定的な運営を目指し、1953年（昭和28年）3月4日には岡ビル商業協同組合が設立されます。設立当初30名だった組合員は、現在36名となっています。この組合は、市場に入居する様々な事業者を束ね、食品の卸売・小売を中心としながら、調理器具や日用品、酒類の販売、さらには食料品の加工、喫茶店や理美容院といったサービス業まで、幅広い業種を包含し、市場全体の維持発展に寄与しています。

施設そのものも、1975年（昭和50年）には大規模な改修工事が行われ、その機能維持に努めました。

施設概要

現在の岡ビル建物は、1951年（昭和26年）に完成したものです。設計は久米建築事務所（担当：渡辺洋治）、施工は大林組が手掛けました。地上4階建てで、総延床面積は6412.76平方メートルを有します。1階は主に店舗フロアとして利用され、2階から4階は住宅部分となっています。敷地面積は約54メートル×52メートルです。建物の完成時以降、入居する店舗数は変動しており、現在は31店舗が営業しています。

現況と今後の展望

しかしながら、現在の岡ビルは厳しい経営環境に直面しています。周辺地域への大型小売店の進出などによる競争激化、そしてそれに伴う空き店舗の増加は、市場全体の活気を低下させています。また、岡ビルの所在地を含む野田屋町1丁目3番地区と隣接する2番地区では、合同での再開発準備組合が結成されており、将来的な市場のあり方に大きな変化が訪れる可能性が示唆されています。

こうした逆風の中でも、岡ビルは地域住民にとって不可欠な存在であり続けています。新鮮な食料品をはじめ、日常の買い物ができる場所として「近隣住民の台所」として親しまれています。特筆すべきは、単なる小売機能だけでなく、事業者間取引を行う仲卸機能を併せ持っている点です。これは現代の小売市場としては珍しく、岡ビル独自の強みとなっています。市場では、この仲卸機能の活用を含め、変化する時代のニーズに対応し、存続に向けた多様な取り組みが進められています。

岡ビルは、戦後の混乱期から地域商業を支え、一時は職住一体型の先駆的な施設として大きな影響力を持った歴史ある市場です。厳しい現状や再開発という大きな転換点に立ちながらも、地域に根ざした役割と独自の機能を活かし、未来への道を切り開こうとしています。

もう一度検索