岡崎平野

岡崎平野について

岡崎平野は、愛知県の中部から南部にかけて広がる平野で、矢作川の下流域に位置しています。別名として、西三河平野や西三平野とも呼ばれています。この地域は、東部の矢作川と西部の境川という二つの川の流域に形成された沖積低地と、その中間に位置する碧海台地と呼ばれる洪積台地から構成されています。

地理的特徴

岡崎平野は、東西約20キロメートル、南北約36キロメートル、面積は約700平方キロメートルと、愛知県内では濃尾平野に次いで2番目の広さを誇ります。三河高原の西側から知多半島の東側にかけて広がっており、南側は三河湾の渥美湾、西側は三河湾の知多湾に面しています。

平野の東部を流れる矢作川は、最下流部の西尾・幡豆地区に広大な平野を形成し、その周辺には、かつて川が形成した自然堤防が数多く分布しています。また、三河湾岸には海抜ゼロメートル以下の干拓新田も見られます。

この地域は、典型的な東海式気候区に属しており、年間降水量は約1400ミリメートルと、愛知県内では比較的少ない地域です。碧海台地には、逢妻川や猿渡川など、境川の支流が網状に開析しており、複雑な地形を形成しています。

地質

岡崎平野の地質は、周辺の地形や河川の影響を強く受けています。愛知県北東部に位置する美濃三河高原は、花崗岩が卓越しているため、矢作川の河川堆積物は主に砂で構成されています。これにより、沖積低地には自然堤防が発達しました。碧海台地の北部は、矢作川によって形成された扇状地であり、花崗岩やチャートなどからなる礫層でできています。一方、南部は矢作川の三角州によって形成された砂層が主体です。

かつて矢作川の本流は、現在の矢作古川でしたが、1605年に流路が変更され、現在の矢作川が本流となりました。平野の右岸に位置する段丘面は、最も高い位置にある藤岡面（第三紀）から、三好面、挙母面、碧海面（いずれも更新世）と続いており、特に挙母面と碧海面が岡崎平野の主要な地形となっています。豊田市街地がある挙母面は、標高80-20メートルで、やや河川の侵食が進んでいます。一方、安城・刈谷・知立・高浜・碧南市街地がある碧海面は、標高20-5メートルと比較的低くなっています。

経済

岡崎平野は、農業と工業の両方が盛んな地域です。

農業

碧海台地の中でも、矢作川の右岸は安城ヶ原と呼ばれ、かつてはマツが生い茂る原野でした。しかし、1880年に明治用水が開設され、その後の枝下用水の整備によって、約6000ヘクタールの水田が開発されました。愛知県安城農林学校（現在の愛知県立安城農林高等学校）などの指導により、多角的な農業経営が発展し、1930年頃には安城ヶ原は「日本デンマーク」と呼ばれるほどの農業地帯へと変貌しました。現在では、岡崎市などを中心に、酪農や畜産、イチゴ、キュウリ、ナス、カーネーションなどの施設園芸農業が盛んに行われています。

工業

豊田市や刈谷市とその周辺地域では、トヨタ自動車に代表される自動車工業が非常に盛んであり、中京工業地帯の中核を担っています。

このように、岡崎平野は豊かな自然と多様な産業が共存する地域として、重要な役割を果たしています。

もう一度検索