岡本昌房

雪圭斎岡本昌房：江戸中期の大坂を彩った浮世絵師

岡本昌房（おかもとまさふさ）は、江戸時代中期に大坂で活躍した浮世絵師です。生没年不詳ながら、その作品群から当時の大坂の文化の一端を垣間見ることができます。

北尾辰宣の薫陶を受けた才能

昌房は、北尾辰宣という著名な浮世絵師に師事したと伝えられています。北尾辰宣は、上方絵画界を代表する存在であり、その門下からは多くの優れた浮世絵師が輩出しました。昌房もその才能を受け継ぎ、独自の作風を確立していったと考えられます。

上方独特の技法「合羽摺」を用いた作品

昌房の作品の特徴として、上方独特の技法である「合羽摺（こうはずり）」を用いたものが多く見られます。合羽摺は、孔版の一種で、版木に彫られた絵柄からインクを刷り付ける技法です。この技法は、鮮やかな色彩と繊細な表現を可能にし、昌房の作品に独特の美しさを与えています。

役者絵、美人画、そして当時の世相

昌房は、役者絵や美人画を得意としていました。明和から天明にかけての時代、つまり18世紀中頃の大坂の演劇や女性の美意識を反映した作品を数多く残しています。当時の人気役者を描いた作品からは、大坂独特の賑やかで活気のある雰囲気が伝わってきます。特に、初代中山文七を題材とした作品は、文七の堂々とした風貌と、相撲取りとして知られるその体格を見事に捉えており、非常に高い評価を得ています。代表的な作品として、『関取千両幟』の千羽川吉兵衛、『伊賀越乗掛合羽』の唐木政右衛門などが挙げられます。これらの作品は、当時の芝居小屋の賑わい、そして役者たちの華麗な姿を見事に表現しています。

また、美人画においては「有馬湯女図」（細判5枚続）が有名です。有馬温泉の湯女を描いたこの作品は、当時の人々の生活や風俗を垣間見ることができ、歴史的にも貴重な資料となっています。

代表作「清水清玄行力桜」

昌房の代表作の一つに「清水清玄行力桜」があります。明和8年（1771年）3月初演の芝居を題材としたこの作品は、合羽摺によって描かれており、鮮やかな色彩と力強い筆致が特徴です。現在、天理図書館に所蔵されています。

まとめ：大坂の風情を伝える貴重な記録

雪圭斎岡本昌房は、生没年不詳ながら、その作品を通じて江戸中期の大坂の活気と文化を後世に伝えてくれる、重要な浮世絵師です。役者絵や美人画、そして上方独特の合羽摺という技法を用いた作品群は、当時の世相を伝える貴重な資料であり、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。彼の作品は、単なる絵画としてだけでなく、歴史資料としても高く評価されており、今後の研究にも期待がかかります。

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