岡本民夫

岡本 民夫（おかもと たみお）

1936年に和歌山県で生まれた岡本民夫は、日本の社会福祉学に多大な功績を残した研究者、教育者です。同志社大学で長年にわたり教鞭を執り、退職後は名誉教授の称号を贈られました。2024年12月11日にその生涯を終えています。

略歴

岡本氏は、1959年に関西学院大学文学部社会事業学科を卒業後、浅香山病院での勤務を経て、社会福祉の実践現場にも触れました。その後、教育・研究の道に進み、1964年には熊本短期大学の講師に着任。同大学で助教授、教授と昇進し、教育者としてのキャリアを積みました。1980年には同志社大学文学部の教授に就任し、2007年に定年退職するまで、多くの学生を育て上げました。退職時には、長年の功績が認められ、同志社大学名誉教授となっています。また、2016年11月には、社会福祉学分野への貢献に対し、瑞宝中綬章が授与されました。

主な業績

岡本氏の業績は、社会福祉の理論と実践の両面に及び、特に社会福祉援助技術や介護福祉教育に関する著作が多くあります。氏の単著としては、1973年の『ケースワーク研究』（ミネルヴァ書房）や、1988年の『福祉職員-研修のすすめ方』（全国社会福祉協議会）などがあり、研究者および教育者としての視点から、福祉専門職の実践能力向上に向けた提言を行いました。

共編著も多数手掛けており、1980年には『医療福祉の研究』（内田守と共編、ミネルヴァ書房）を出版し、医療と福祉の連携という今日の重要なテーマに早くから光を当てています。特に、社会福祉士・介護福祉士養成テキストシリーズとして、川島書店から多くの共編著を世に出しました。

このシリーズには、介護概論、介護技術、介護福祉実習、社会福祉援助技術総論、障害形態別介護技術、社会福祉援助技術の実践・演習に関するテキストが含まれており、それぞれ久垣マサ子、奥田いさよ、久恒マサ子、小田兼三といった他の専門家と共同で執筆・編集されました。これらのテキストは、当時の社会福祉教育、特に援助技術と介護福祉の標準的なカリキュラム形成に大きく寄与したと考えられます。

また、『社会福祉援助技術総論』（1990年、編著、川島書店）や、『社会福祉援助技術 実践に役立つ理論の展開』（1995年、編著、川島書店）、『社会福祉援助技術演習 実践に必要な柔軟な応用思考・動作の訓練』（1995年、編著、川島書店）など、単独での編著も複数あり、社会福祉援助技術の理論体系化と実践応用に関する深い知見を示しています。

さらに、社会福祉全体を扱った入門書や概論、福祉情報化、ソーシャルワークの技能、長寿社会、エンサイクロペディア社会福祉学など、幅広いテーマで多くの専門家と共編著を刊行しています。これには、『社会福祉入門』（井上千津子と共編、1999年、有斐閣アルマ）、『社会福祉士養成テキストブック 社会福祉原論』（小林良二、高田眞治と共編著、2002年、ミネルヴァ書房）、『ソーシャルワークの技能 その概念と実践』（平塚良子と共編著、2004年、ミネルヴァ書房）、『エンサイクロペディア社会福祉学』（監修：仲村優一ほか、共編：田端光美ほか、2007年、中央法規出版）などがあります。

晩年には、『戦後日本ソーシャルワーク基本文献集』（2011年、日本図書センター）の監修も務めるなど、日本のソーシャルワーク研究史における重要な文献の整理・普及にも貢献しました。これらの著作群は、日本の社会福祉学、特に専門職教育の発展における氏の貢献の大きさを物語っています。

もう一度検索