岡村定矩

岡村 定矩

岡村 定矩（おかむら さだのり）は、1948年3月10日に山口県豊浦郡豊浦町（現在の山口県下関市）に生まれた日本の著名な天文学者です。専門分野は銀河天文学および観測的宇宙論で、銀河の構造や進化、宇宙の距離尺度といった壮大なテーマの研究に長年携わってきました。東京大学で長く教鞭を執り、現在は同大学の名誉教授であるとともに、法政大学理工学部の教授を務めています。天文学者の高瀬文志郎氏に師事しました。

経歴

岡村氏は、1966年3月に山口県立下関西高等学校を卒業後、東京大学理学部天文学科に進学し、1970年3月に卒業しました。さらに東京大学大学院理学系研究科に進み、1973年3月には修士課程天文学専攻を修了しました。博士課程に進んだ後、1976年4月には単位取得退学し、日本学術振興会の奨励研究員として研究を続けました。そして、1977年3月に理学博士号を取得しています。

研究者としてのキャリアは、1978年4月に東京大学東京天文台木曽観測所の助手としてスタートしました。その後、国際的な視野を広げるため、1981年10月から連合王国エジンバラ王立天文台にて客員研究員として滞在し、1982年7月に帰国しました。1986年9月には東大東京天文台木曽観測所の助教授に昇任しました。

組織改編に伴い、1988年7月には東京天文台が東京大学から独立して国立天文台となったため、東大天文学教育研究センター木曽観測所の助教授と国立天文台の助教授を併任する形となりましたが、1989年3月には国立天文台助教授を辞任し、東京大学の助教授職に専念することを選びました。1991年4月には東京大学理学部天文学科の教授に就任し、1993年3月からは東京大学大学院理学系研究科天文学専攻の教授として、後進の指導にも力を注ぎました。

学術研究だけでなく、大学運営においても重要な役割を果たしました。2003年4月には東京大学大学院理学系研究科長および理学部長に就任し、教育・研究体制の充実に貢献しました。さらに、2006年4月からは東京大学の理事・副学長という重責を担い、大学全体の運営に関わりました。2012年3月に東京大学を定年退職し、長年の功績が称えられています。なお、東京大学での岡村研究室の研究活動は、弟子の嶋作一大氏によって引き継がれています。

東京大学退職後も、研究者・教育者としての活動を続けており、2012年4月からは法政大学理工学部創生科学科の教授として、新たな環境で教育・研究に従事しています。

研究活動

岡村氏の研究テーマは多岐にわたりますが、特に以下の分野に貢献しています。

銀河の定量分類: 銀河の形態を客観的かつ定量的に記述・分類する手法の開発と応用。宇宙に存在する様々な銀河の多様性を理解する上で基盤となる研究です。
銀河・銀河団の構造と進化: 銀河やそれらが集まった銀河団が、宇宙の歴史の中でどのように形成され、進化してきたのかを探求。大規模構造形成や宇宙論的パラメータの解明に繋がる重要な分野です。
宇宙の距離尺度: 天体までの距離を正確に測定するための手法に関する研究。宇宙の大きさや膨張率を決定する上で不可欠な要素です。
天体画像処理システム: 望遠鏡で得られた天体画像を解析するためのソフトウェアやシステムの開発。観測データの質を高め、そこから最大限の情報を引き出すための技術開発も重要な研究テーマです。

これらの研究は、宇宙の基本的な構造や進化に関する私たちの理解を深める上で、多大な貢献をしています。

著書・訳書

研究活動の傍ら、一般向けの科学啓蒙や専門書の執筆、翻訳にも積極的に取り組んでいます。主な著作としては、分担執筆した専門書『宇宙の観測I・天体写真測光』や、岩波書店から刊行された科学ライブラリーの一冊である単著『宇宙はどこまでわかったか』、東京大学出版会からの『銀河系と銀河宇宙』などがあります。共著には、福音館書店から出版された『宇宙のアルバム』があります。また、編著として『天文学への招待』や『数学セミナー別冊 宇宙はどこまでわかったか？』があり、多くの読者に天文学の面白さを伝えています。さらに、R.ベレンゼン他による『銀河の発見』（高瀬文志郎氏との共訳）や、コリン・ロナン著『ディープスペース』（監訳）といった翻訳書も手掛けており、海外の優れた科学書を日本に紹介する役割も果たしています。

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