岡林信康アルバム第二集 見るまえに跳べ

『岡林信康アルバム第二集 見るまえに跳べ』は、岡林信康が1970年6月1日にURCからリリースしたスタジオアルバムです。このアルバムは、彼がフォークシンガーとしてのイメージから脱却し、ロックへと音楽性を大きく転換させた作品として知られています。

背景

岡林信康は、1969年に「反戦フォークの歌手」というイメージに嫌気がさし、人気絶頂の中で活動を一時休止しました。その間、ボブ・ディランのアルバム『ライク・ア・ローリング・ストーン』を聴き、ロックに目覚めます。友人の小倉エージの提案で、当時「ヴァレンタイン・ブルー」と名乗っていた「はっぴいえんど」をバックに、ボブ・ディラン＆ザ・バンドのようなスタイルで音楽制作を試みました。プロデューサーには早川義夫を迎え、新たな音楽スタイルを追求しました。

アルバムタイトルの「見るまえに跳べ」は、大江健三郎の短編集から引用されており、「まず行動することが大切だ」というメッセージが込められています。また、収録曲「堕天使ロック」の歌詞にもこのフレーズが含まれています。

制作過程

URCのディレクターに任命された早川義夫は、1970年2月中旬に岡林の自宅に一週間ほど滞在し、楽曲制作のディスカッションや現場に立ち会いました。当時、岡林はURCの看板スターであったため、レコーディングは、まず早川義夫とはっぴいえんどが仮歌と音合わせを行い、岡林が合流するという形式で進められました。

ロックのレコーディングは試行錯誤の連続でした。技術面で苦労したスタッフは、洋楽に詳しいはっぴいえんどのメンバーにアドバイスを求め、ドラムに毛布を被せるなど、音作りにも工夫を凝らしました。ピアノとオルガンを担当した渡辺勝は、斉藤哲夫の紹介で参加し、ベースの稲葉正三とドラムの小川敏夫は、若林純夫の紹介で参加しました。斉藤哲夫は、この3人による岡林バンドの方が、はっぴいえんどより良かったと述べています。

収録曲とエピソード

アルバムには、「愛する人へ」「おまわりさんに捧げる唄」「性と文化の革命」「自由への長い旅」「私たちの望むものは」など、岡林の代表曲が収録されています。また、早川義夫の楽曲やジャックスのカバーも収録されています。特に「愛する人へ」は、当時交際していた吉田日出子を歌ったものとされています。また、このアルバム発表後、岡林はバンドを従えて日本縦断コンサートを行い、その際、デビュー前の海援隊が前座を務めたというエピソードも残っています。

収録曲

Side A

1. 愛する人へ
2. おまわりさんに捧げる唄
3. 性と文化の革命
4. 自由への長い旅
5. 私たちの望むものは

Side B

1. NHKに捧げる歌
2. 堕天使ロック
3. ロールオーバー庫之助
4. ラブ・ゼネレーション
5. 無用ノ介
6. 今日をこえて

レコーディングメンバー

岡林信康（唄、ギター）
はっぴいえんど（細野晴臣、大滝詠一、鈴木茂、松本隆）
渡辺勝（ピアノ、オルガン）
稲葉正三（ベース）
小川敏夫（ドラム）
吉田日出子（唄）
木田高介（フルート）

スタッフ

ディレクター: 早川義夫
プロデューサー: 秦政明

『見るまえに跳べ』は、岡林信康がフォークからロックへと音楽性を転換させた重要な作品であり、彼の音楽キャリアにおけるターニングポイントとなりました。このアルバムは、URCで断トツのセールスを記録し、多くのリスナーに影響を与えました。

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